退屈な時間
「長所を伸ばすか短所を減らすか……判断は人それぞれだとは思うが、この大会に出場しているのは皆が上澄みの魔術師達だ。長所を活かせば勝てるとも限らん以上は器用貧乏で終わる可能性だってありえるだろう」
「毎年善戦するか、当たりを引くまで毎年挑戦するか……まあ、人それぞれだろうな」
人それぞれとは言うが……正直な話、得意分野一点狙いは年を重ねる度に選べなくなってくるだろうな。実力がピークを過ぎてしまえばそれ以外に選択肢が無くなるからかえって開き直れるかもしれないが、選択肢がある状況でそこまでの胆力がある人間はそうざらにはいないだろう。
「あいつは……今年は運が無かったのだろうな。やむを得ない事だ」
「流石にショックか……?」
「どうだろうな。運が悪ければこんなものだとは思うぞ」
オリヴィエは冷静に言葉を口にするが、その表情は冷静と言うよりも退屈そうな表情に近かった。口には出さないが、やはりモチベーションは最初の頃よりも低下しているように感じられる。
「来年頑張れってわけか。自分の出番が来る前に来年の話になるのはモチベーションが下がるな?」
「馬鹿を言え。子供じゃないんだ。知り合いが負けたくらいで仕事で手を抜くわけがないだろう」
「……その割りには熱量が下がっているように見えるが……続きも見るのか?」
とりあえず、フィリパがすでに競技を突破しているとは考えてはいない様子だ。少なくとも、もしもあの場にフィリパがいたらもっと熱中して観戦していただろう。それに加えて言わせてもらえば、子供じゃないって程大人ってわけでもないだろう。
「……まあ、一応見ておいて損は無いだろう」
「正直な話、今残っているメンツの中に要注意人物はいそうか? もしもいるなら、出来ればこの競技で退場してもらいたいものだが……」
「……随分と消極的だな。貴様の方が冷めているのではないか?」
「そりゃあ熱も入らんだろ。知り合いの一人でもいればあっちを選べだとか……そういう楽しみ方も出来ただろうからな」
多分、知り合いが参加している身としてはそれが一番楽しい観戦方法なのだろうが……一人も残っていないとなると、すでに突破している事を願う他無いからな。こう言ってはなんだが、自分の出番の前としては退屈な時間と言わざるをえない。




