どこに誰がいるのかわからない
「確かに次の競技で有利不利が生じるのは避けたいところか。それに、この大会に限った話じゃないが、敗者復活戦で勝ち上がった者が優勝するって話も無いわけでも無さそうだしな」
「過去にどれだけの敗者復活戦が行われたかは定かでは無いが、いたとしてもおかしくはないだろうな」
あり得ないって事は無いだろうな。それに、優勝まで行くのは極端だとしても、トップ層に食い込むくらいの事は発生してもおかしくはないだろう。……と、言うより、これだけの人数が敗者復活戦を行うのだからここから順位を跳ね上げる選手は普通にいるだろう。
「この敗者復活戦で勝ち上がった奴があろう事か優勝する。……なんて事があれば夢のある話だが、そう簡単な話ではないだろうな。それよりも一喜一憂しなければならない事は、現時点で誰が競技を突破していて、これから誰が突破するのか? そして、誰が敗退してしまうのか……だ」
「一喜一憂はすべき事ではないと思うが……」
「まあ、泰然自若としているべきだろうな。しかし、誰が勝って誰が負けたなんてのは、俺達からしてみたら観客達と同じ立場だろう。知らない奴が勝とうが負けようが何の感動も生まないだろう」
自分にとって良くも悪くも縁のある人間でない限りは一喜一憂もしないのだからな。
「確かに誰が勝っても所詮は他人事なのだから知った事では無いと言われたらそれまでだが……」
「それよりも、俺達の知り合いが勝ち上がれたかどうかだろう。あんな人混みの中では見分けがつかんがな」
映像も、選手一人一人の表情を映しているわけでもないからどこに誰がいるのか全くわからん。と言ったところで、選手一人一人の表情をアップで映されても、今度は知っている顔が出るまでいったいどれだけの時間がかかるのか見当も付かなくなるし、何よりかえって全体像がつかめなくなってわけのわからない映像になり果ててしまう事だろう。
「勝ち上がった者達の中にいたとしても、敗者復活戦に参加している選手達の中にいたとしても、映像からではわからんな。競技が終われば通過した選手の名前が張り出されるから、そこから確認するしかないな」
五百人分の名簿の中から知り合いの名前を探し出すのか。まあ、競技が終わったら昼休憩があるからな……その時間を使えば調べるのは容易だろう。もっとも……勝ち上がったのを確認したところで、おめでとうの一言も伝える事は出来ないし、俺達の知らないところで残り百人をかけた戦いに挑む事になるのだがな。




