敗者復活戦の発生
「結局のところ、常に人数を数えながら二択問題で減らしていくのが確実という事だな。……丁度敗者復活戦が確定したようだぞ」
オリヴィエの言う通り、映像を見ると正解した選手達が会場を後にするのが見て取れる。
「ん? もうか? さっきまで相当な人数が残っていたハズだが……」
「どうやら多数派が間違えたらしい。これで敗者復活戦が行われる」
「敗者復活戦が行われる事が一目瞭然なのは良い事だが、そのために敗者復活戦の参加者が桁違いの人数に膨れ上がってしまったのはあまり良い事だとは言えそうにないな」
正解したのが明らかに五百人を下回っているのはわかりやすくて良いが、ここから後の人数調整も大変だろうな。
「ああ。見たところ三桁……いや、千人近くいるか? かなりの大事件だぞこれは?」
「優勝候補に答えを合わせるだけで勝ち上がれるんじゃなかったのか……? 優勝候補が間違えたという事か……?」
にわかには信じがたい出来事だ。優勝候補が間違えたにしても、意見が二つに分かれればある程度は人が割れるハズだ。にもかかわらず一か所に集中するとは。
「いや、優勝候補達は問題無く突破しているな。制限時間ギリギリで答えを変えたようだ」
「自分に合わせて来ている事を逆手に取ったのか……? しかし優勝候補達が意見を二分させていたらもっと満遍なく……いや、まさか、優勝候補全員がわざと間違えて誘導したのか……?」
確かにそれなら説明がつく。しかしそうなると優勝候補達全員が示し合わせた事になるぞ……?
「そういう事になるな。回答の締め切りは時計で管理している様子だからタイミングは計りやすいな」
「だが、優勝候補達が揃って移動したら一目でわかるだろう?」
「恐らく転送魔法で一瞬の内に移動したのだろうな。締め切りの十秒前にでもやればとてもでは無いが対応が追い付かん。何せそれに最も早く気が付く者は人混みの中心にいるのだからな」
優勝候補に合わせて答えを決める選手が多数いる以上、その人物の周囲には人が密集している事になるわけか。そんな中で転送魔法で移動したとなれば、近くにいる者達からは突然消えたように見えるだろう。人が壁になって、別の解答に変更したとはすぐにはわからないだろう。そしてそれに気が付けたとしても、人混みの中をかき分けて移動するなんて事はそう容易くは出来ないハズだ。
「まんまとしてやられたってわけだ。だが、どうやって意思疎通をした? そんなやり取りをしてたら気づかれるんじゃないのか?」
「優勝候補同士の会話に聞き耳を立てようにも、あれだけ人が密集していてはまともに聞き取れないのかもしれんな」
確かに普通の立ち話しでも内容を正確に聞き取るのは難しいか。それに、聞き取ったとしても、それをわざわざ他人に教える義理も無いわけだ。むしろ周囲の人間を出し抜くチャンスと捉えれば、何も言わずに自分だけ回答を変えるだけに留めるのが普通だろうな。




