学生にとっては幸運
「問題の難易度が徐々に上がっていくのは当然の流れとして、最終的にどこまでの難易度にまで跳ね上がっていくのかが重要だな。因みにだが、今出されてる問題ってのは学生のレベルを超えているのか?」
世界レベルでの上位五百名を絞り込むための問題だ。学生レベルなんてぶっちぎって行っても何ら不思議は無い。
「今のところはまだ私でもわかる程度の問題ばかりだな」
「まだ様子見ってところか? しかし、それにしては脱落者が多く見えるな……」
「人間誰にでも得意不得意というものはあるからな。得意分野なら世界でも指折りだったとしても、苦手分野においては学生にすら負けるという事だってありえるわけだ」
……まあ、勉強なんて大人になったらやらなくなるだろうからな。そして人間てのは一度身に着けたものであっても、案外すぐに忘れてしまうものだ。苦手分野だとか、専門外の分野に関してはすぐに素人レベルにまで落ちてしまうだろう。
「苦手分野が問題に出たら万事休すか。運の要素がかなり高いんじゃないか? もっとも……筆記試験のような総合力を評価されたら学生が勝ち残れるわけが無いのだからむしろかなり恵まれている方か」
極端な事を言ってしまえば、二分の一を当て続けてしまえば良いわけだからな。しかも他の選手がどちらの解答をするかも見てから判断を下す事も出来る。つまり、答えがわからなくても正解を出すことは可能という事だ。
「ああ。この競技内容になっている時点で幸運と言う他無いな。現に二択問題で片方に全ての選手が集まるという現象は発生していない。確実に人数は減って行っている」
「学生レベルの問題でも間違える選手は多いって事か……だが、現時点でも世界でも上澄みと断言して良いような連中が集結しているんだろ? それでも間違えるものなのか……? わからないなら周囲の選手に合わせるって事も出来るんだぞ……?」
まあ、わからないから何となくで選んで当たったり間違えたりするのだろうが……言っても学生レベルの問題なら割合としては多数派と少数派でかなりの偏りが出るハズだぞ。
「その周囲に合わせると言うのが案外難しいのかもしれないな。今貴様が言ったようにあの場にいるのは皆エリートかその候補だ。たとえ答えがわからなくとも自分の直観や意見を変えられない者がいたとしても何らおかしくはない。今まではそれで何とかなったのかもしれないが、あの場では根本的に平均も最低値も水準が違うからな。そういった点が如実に表れてしまっているのだろう」
……子供の頃は神童と呼ばれていても、ある程度の年齢になってくると凡人レベルになっているというアレか。まあ、志望校だとか、所属するコミュニティのレベルを必要以上に上げて行けば必然的に下層に所属する事になってしまうからな。そいつが全人類を通して比較してもトップ層でもない限りはその現象にぶち当たる事になる。




