集まっていた理由
「確かにトラブルが起きているようだな。恐らく選手の中で暴れ出した奴がいたのだろう」
なるほど。確かにオリヴィエの言う通り、係員が数人がかりで一人の男を取り押さえているようだ。
「ここまで人が多い場所だと一瞬で大惨事にまで発展するからな……係員も取り押さえるのに必死だな」
「まあ、この大会に参加出来るだけの実力があるのは確かだからな。下手したら係員の二人程度なら倒して暴れまわるだけの力はあるのかもしれんぞ」
係員の方は下手したら今までで一度もあの大会に選手として参加した事が無いって可能性も普通にあり得るわけか。
「だとすると……場合によっては係員総出で対応しようとしてもなぎ倒される危険性はあるわけか……場合によっては中止もありえたのか……？」
「さあな。だが、そんな実力者がこんな早い段階で、しかも二択クイズなぞで脱落するというのは……あまり考えたくは無いな」
まあ、上澄みの中の上澄みというレベルの魔術師が二択クイズで間違えるというのはあまり見栄えの良いものでは無いな。
「安定して上位を維持出来る連中は簡単な二択問題は外さないってわけか。一人で決断するなら万に一つもあるのだろうが……これだけ人数がいるとなると、知り合いと話し合う事も出来るだろうからな。それこそ上位陣なら上位陣同士での横の繋がりというのもあるだろうし、落ちるとなったらかなりの数が脱落する事になりそうだな」
大会の上位勢はそのランク帯の絶対数の少なさから、大会の度に複数回会っている事も容易に想像がつくからな。仮にルール上、周囲の人間と相談する事が禁止されていたとしても、アイコンタクトなり何なりで意思の疎通をする事は不可能では無いし、それに何より係員が参加者全員を監視するなんて不可能なんだからやりようは幾らでもあるだろう。それこそ一切会話せずに、問題を解けそうな選手の後をついていくだけで良いという話になりかねないからな。
「……取り押さえられていた男が連れ去られていったな」
「明らかに競技の邪魔だからな。強制退場もやむなしか」
「ああやって選手が間引かれていくわけだ。この分なら案外早く終わるか？ いや、ある程度の段階から脱落者が出なくなって膠着状態に陥るかもな……」
「そう言えば、逆に生き残りが五百人を下回ったらどうなるんだ？ 俺達が受けた説明を聞く限り、参加者人数が前後する事は無さそうのように聞こえたが……」
間違えた選手達の中から丁度良い人数になるまでクイズを出し続けるのか？ というか、五百人なんて数をどうやって数えるのかも大変だな。後になって人数が合ってませんじゃ大問題になるからな。
