各グループに二十人
「……まあ、そういう膠着状態によって発生しやすい同点を避けるために審査官が集められているわけだろ?」
「確かに競技が終わった後の事は考えなくて良いわけだからな。だが、審査官を一人でも倒した上で制限時間まで生き残り続けたら、それだけで他の選手を十人倒した選手と同じ点数になってしまうんだぞ? むしろ俺達審査官の存在が膠着を生み出す原因になりかねないんじゃないか?」
審査官の一人が冷静にルールを分析する。その人の言う通りで、この競技は最後まで生き残った選手への得点があまりにも大き過ぎるからだ。
「審査官を一人でも倒してしまえば、後は最後まで生き残るだけで試験の突破がほぼ確実になってしまうわけだからな……審査官の責任は相当重いと言えそうだな……」
「まあ、選手の十倍だからな……十人分となれば、かなり魅力的に映るだろうな」
「いや、これはそういうレベルの話じゃない。本当に文字通りの意味で、審査官を倒した選手はほぼ確実なパスを入手したと言っても過言では無い状況が生まれてしまうぞ」
「そこまで確実にか?」
オリヴィエは俺に耳打ちしてくる。
「他の選手を十人倒せば同点と言ったが……その、ライバルを十人倒せる選手が何人いるかで考えればわかりやすいな。もしも九人の選手がそれぞれ十人の敵を倒したら、倒された選手は何人になると思う?」
「……九十人だな……」
「そうだ。もしも十人倒した奴が最後まで生き残れば、最大でも上位九名までしか席が埋まらない計算になる。その後に誰も倒せなかったが最後まで生き残った選手が十位に収まる。そこから残り十人を得点の高い順に埋めていく事になるわけだ」
そう、そもそもの話、敵を十人も倒せる選手がどんなに多くても一桁の人数で終わってしまうのだ。逆に言えば、それだけ審査官を倒すというのはこの競技において最も重要な要素であるとも言えるだろう。
「今言ったパターンで考えれば、何もせずに生き残った選手はそれだけでグループ内十位に入れてしまうな?」
「まあ、実際には他の選手を倒した奴同士での戦いもあるからもっと複雑な計算になるとは思うが、基本的に審査官を倒した選手は勝ち上がりがほぼ確実だ。そして偶然かどうかは知らないが、審査官は各グループに二十人いる」




