突破のカギ
「他のグループの状況も知れるのか……一定期間というのは、選手達にもどのタイミングで放送が来るのか把握出来るという事ですか?」
「はい。その通りでございます。もしも予定に無いタイミングで放送が行われるとしたら、それは何らかの形で競技の続行が不可能になり中止になった場合。もしくは競技者が一人を残すのみとなり、競技が終了となってしまった場合になります。もっとも、その可能性は限りなく低いとは考えてしますが」
基本的には時計さえ持ってれば他のグループの状況は聞き取れるわけか。
「どう思う? 他のグループの状況なんて放送を聞く以外に知りようがないんだから、そのタイミングになったら戦闘を避けて来るか?」
「むしろそう動く事を逆手にとって積極的に戦いを行おうとする連中も出て来そうだな」
「まあ、俺達審査官の方はいつでも情報を得られるんだから、襲撃を仕掛けやすいタイミングではあるな」
襲撃か。そこも露骨に読んで来そうな話ではあるが、放送を聞く事に意識をある程度割いている状態だと考えれば狙わない理由は無いな。
「それよりも、これだけポイント加算の要因が多いなら、それだけ同点の選手の数は減るハズだ。100より下の順位決めもスムーズに終わりそうだな」
「戦いが膠着さえしなければその通りだな。だが、もしも一つのグループで誰もリタイアせずに全員が制限時間いっぱいまで生き残ったら、100人全員仲良く100点で均一だぞ?」
……確かに、競技が膠着すると同点の選手が多くなるかもしれないな。
「そうならないように工夫しているんだろ? まあ、それでも理論上は起こりえる事ではあるな。……その場合、順位を決めるのはどれだけ審査官を倒しているかだな。各選手がほぼ均一な点数を持っているなら、1点の格差はかなり大きなものになるハズだ」
「そうなると、高スコアで順位を決めているグループは堪ったものじゃないな。膠着状態のグループのトップより、乱戦に陥ったグループの20位以下の選手の方が得点は高いんじゃないか?」
……と、言うより、これは計算してみればわかる事だが、制限時間いっぱいまで生き残った選手は確定でグループ内で計算されたポイントが加算されるという性質上、トップの得点は文字通り1点差の勝負になるだろうな。つまりどれだけのライバルをその手で倒しているか……その上で最後まで生き残るかが突破のカギになるだろうな。審査官のポイントが10点という事を考えると、審査官を倒して最後まで生き残った選手はほぼこの競技を通過すると考えても良さそうだ。




