厄介な相手程関わり合いたくない
「有力者の近く程離れたがるから、優勝候補はかなり自由に動き回れるだろうな。逆に無名の選手は最初の段階で俺達から集中的に狙われる可能性が高いわけだ」
「そこは流石に仕方ないのか……? それよりも、最初の話じゃ選手同士での結託もアリって話だったよな? それなのにランダム配置になんてして良いのか?」
係員からの説明に対して、審査官達の疑問はどんどん増えていく。
「ランダム配置に関しましては選手達の配置場所の取り合いでトラブルが発生する可能性が高いと判断し、確実に必要と判断しました」
「……まあ、表向きはバトルロワイアルなんだから最初からチームを組んで競技開始ってわけにはいかないか」
「そうなると、競技が動くのは各選手達が事前に結託した仲間達と合流するまでの初期段階になるな。最初の数分で俺達審査官がどれだけ多くの選手を脱落させる事が出来るかでその後の運びは一気に変化しそうだ」
確かにどこに敵がいてどこへ向かえば仲間と合流する事が出来るのかわからないのはかなりモタつくだろうな。その間に完成されたチームで動く事の出来る審査官はかなり有利だと言えるだろう。
「確かに各選手の配置まで把握出来ている俺達が初期段階では圧倒的に有利だな」
「逆に言えば、それだけこっちを有利にしないといけないくらい選手達は強いと考えられているわけだ」
「実際、それだけ有利な状況を用意して貰っていても、優勝候補に襲撃を仕掛けようって思えないんだから丁度良いハンデなんだろうよ」
まあ、優勝候補は今回呼ばれた審査官達よりも遥かに格上の魔術師のハズだからな。下手に攻め込んでも返り討ちに遭うのが関の山なのだろう。それでも全員で一斉に襲い掛かればチャンスはあるとは思うが……問題なのは、各グループに優勝候補がそれぞれ何人いるか現状ではわからないってところか。一人が相手なら全員で襲い掛かるという作戦も取れるが、これが五人も六人もいるとなれば、とてもじゃないが誰か一人を集中的に狙おうと言う話にはならないハズだ。
「やはり、厄介な相手よりも倒しやすい相手から狙うというのが無難という事になるな」
「実力に自信の無い奴ほど、仲間との合流を最初に目指すハズだからな。そうやって動揺しているところを狙う感じか」
「序盤はそれで良いが、中盤辺りから通用しなくなるぞ。合流は終わってるだろうし、俺達審査官は逃げるべき対象じゃなくて倒すべき対象になっているハズだからな」
確かに選手達の集中力も、俺達と戦うモチベーションもかなり高い水準に到達するような頃合いだろうな。




