審査官達の会話
「最初は得点配分の大きい審査官を倒すために徒党を組むハズだよな? その審査官があらかた倒されるかして状況が煮詰まってきたら、今度はチーム同士での戦いが始まるな」
「それも膠着したら、今度はチーム内での潰し合いになるな。途中でリタイアするか最後まで生き残るかで得点差がエライ事になるぞ」
他の審査官達もにわかにざわつきながら話し合いを始める。より多くの得点を取ろうとシンプルに動くと、最終的には仲間同士での戦いが始まってしまうわけだ。その結論を前提に考えると、序盤からでも意図的に仲間を誤射するという展開が発生してもおかしくなさそうだな。
「えげつねえルールだな。自然とチームを作るように誘導しておきながら、最終的にはチーム内で潰し合いが起こるように設計されてやがる」
「最後の美味しいところを横取り……まあ、これは得点の低さから考えるにあまり考えなくていいか。それよりもリタイアを増やすための蹴落とし合い、これがいつ発生してもおかしくない。まさに弱肉強食の世界だな」
「いや、本当にヤバいのは恐らく、徒党を組んで上位へ押し上げるためのポイントゲッターと盾兼墓地肥やし要因の出現だな。つまりは美味しいところを取る役と盾になって脱落者ポイントを稼ぐ役がグループ内で作られるって事だ」
脱落者が一人でも増えればそれだけ生き残っている奴全員にポイントが確定で加算されるって言う明確なメリットがあるからな。最終的にリタイアしてもらうのを前提にチームに引き入れるという事もあり得るわけだな。つまりチーム内でのヒエラルキーが高い選手が味方選手を倒して得点を集中させて来る可能性は大いにあり得そうだ。競技の終了間際とか同士討ちが頻発するんじゃないのか?
「うっわ、えげつねえなマジで。一緒に頑張ろうって誘われたと思ったら盾にされて終わりって事かよ。人間不信になるぞ」
「しかし、やる奴はいるだろうな。特に貴族のお偉いさんはそういうの罪悪感無しにやるだろ」
「その取り巻き達がどれだけおこぼれをもらえるかだな。一つのグループで平均二十人が勝ち上がると考えると、案外処世術だけで勝ち上がれる奴も出てきそうだな」
グループ一つに支配階級の選手がどれだけいるかにもよるか。しかし、そもそも五百人の中にまで残れている時点で、選手達は少なくともエリート候補という事になる。大会が終わった後の事も考えれば、あえて捨て駒として立ち振る舞う事も甘んじて受け入れる者が出てきてもおかしくはない辺りとも言えそうだな。




