配られたもの
「どう思う? 確かに五百人の中から上位百名を正確に選ぶ事と比べればやりやすいとは思うが……」
「各グループの上位二十名ってのは良いが、それをどうやって決めるんだ? まさか本当に残り二十人になるまで潰し合うって事にはならないだろ?」
係員からの説明に対し、審査官達からの反応はまちまちだった。
「えー、皆様疑問に持つところはたくさんございますでしょうが、まずは私からの説明をお聞きください。皆様には競技中、あるものを装着していただきます」
そう言いながら係員は俺達審査官に金属製のわっかを配る。
「これは……ここでこんなものを見るとはな……」
「知ってるのか?」
リングを鑑定するように注意深く観察するオリヴィエは関心するように独り言を呟いた。
「障壁発生装置だ。これをブレスレットのように腕に着けて使う」
「これから障壁が発生するのか?」
「これ単体では無理だな。専用の魔力供給装置が必要になる。もっとも……実戦で使うには現状ではまだまだ小型化が難しくてな。もっぱらは訓練用で使われるだけだ」
要はこれを稼働させるためのバッテリーが大き過ぎて使い物にならないってわけか。
「えー、この装置をすでにご存じの方はいらっしゃいますとは思いますが、皆様には競技中これを展開しながら参加していただきます」
「これを……? 感知魔法を扱える魔術師からしてみたら我々の位置は丸わかりになるぞ?」
「我々は隠れずに戦えという事なのかもな」
係員からの説明に対し、周囲が僅かにざわつく。
「おい、これをずっと展開し続けるってのはそんなに問題があるのか?」
「まあ、魔力を常に垂れ流すようなものだからな。消耗が激しい上に一定以上のスピードで動かすと障壁の強度が著しく低下する」
一定以上のスピードってのがどのレベルなのかにもよるが……あまり使い勝手の良いものではなさそうだな。
「これは審査官だけでなく、選手達にも同じものを装着していただく事になります。そしてルールは簡単。この障壁を破壊した選手にポイントが獲得されます。このポイントを一定時間内により多く得られた方が次のステージへと進出いたします」
「……誰が誰の障壁を破壊したかなんて特定出来るのか?」
「一応、それ相応の大きさにはなってしまうが、観測所と感知魔法に長けた者がいれば可能ではあるな。魔力の波長は人によって僅かに違いがあるから特定可能という理屈なのだが……それ故に物理的な破壊での特定は自己申告か目視のみという事になるぞ」
物理的破壊では得点にならないようにして魔法の撃ち合いになるように誘導しているのか……? これ以上は係員の説明を聞かない事にはわからないな。




