魔法陣のある部屋へ
「スケジュールならこのホテルの一室でも借りて説明会を開けば良いと思うが……一般客もいると考えれば、そう簡単にはいかんか」
壁に耳あり障子に目ありと言うしな……どこで誰が何をしているのかもわからんのに、軽率に説明会を開くのは問題はあるな。一般客に聞かれたら大変な事になる。
「ああ。ここまで上手く隠し通してきたのに、最後の最後で発覚したら今までの苦労が水の泡になるからな」
「それで転送魔法で移動するわけか」
「そういうわけだ。……着いたぞ」
喋りながら歩いていると、事前に指示されていた部屋の前に辿り着いた。
「ここか……失礼します」
目的の部屋に着くと、俺はチャイムを鳴らす。すると、部屋の中からの返事は無く、ガチャリと鍵が開く音だけが聞こえてきた。俺達はそのまま部屋へと上がり込んだ。
「お待ちしておりました。すぐにあちらへ……会場へとお送りいたします」
部屋の中にいたスタッフらしき人は俺達を部屋の真ん中に描かれている魔法陣へと誘導する。
「他の人達は全員いどうしたんですか?」
「いえ、転送したのはまだ全体の三割程でしょうか」
「……まだそんなものなんですか?」
七割以上はまだホテルの中にいるのか……予定の時刻より五分程度前の時間だからもっと多く移動しているものと思っていたが。
「ええ。後数分も経てば他の方が来られるハズです」
「……なるほど、そもそもの時間をずらしているんですね?」
スタッフの対応で、そもそもこの部屋に集まる時刻は人によって違うようだ。
「同じ時刻に全員を集めてしまっては、混雑の恐れがありましたので……それに、一般のお客様からの注目を浴びるやもしれませんので……」
確かに全員を同じ時刻に集合させてたらとんでもない行列が出来てしまうのは想像に難くないな。その並んでいる面々や、人数を考えれば、鋭い奴なら答えに辿り着いてしまってもおかしくはないだろう。
「それで時間差をつけたんですね? 向こうへ着いたらまずは何を?」
「係員の指示に従って部屋へと移動してください。そこに全員が揃ったら説明会が開始となります」
それまでは案内された部屋で待機ってわけか。まあ、転送なんだからそこまで時間もかからないだろう。さっさと会場まで移動して全員が揃うのを待つとするか。