同じ才能がたくさんいたらどうなるか
「まあ、引き抜く相手を罠にかけるような真似をわざわざやる意味は無いな」
普段の素行に余程の問題が無い限りはそういう話にはならないだろうな。
「万に一つ、そういう話が外に流れれば、自分で自分の首を絞める事になるからな」
「そういう事だな。周囲に広まる事だけは避けねばならん。だとすれば誰彼構わずやれるものではないな。ましてやそれがより多くの人間が関わるようなものであればなおさらだ」
罠にかけるリスクが高すぎるな。そんな事をするくらいならまともに雇って利益を追求した方がよほど割りに合っている。
「ベストかどうかはともかく、引き抜くからにはベターな環境である可能性が高いだろうな」
「正直な話、その場合は元居た場所が自分にとってベストな環境かどうかにもよるな。ベストなら変えるべきでは無いし、ベターならよりベターなのはどちらかの判断をする必要がある」
「まあ、皆が皆理想的な仕事に就けるかと言われたらそんな事はないわけだからな。何かしら妥協している部分はあるだろうな。本来、仕事なんて好き好んでやるものではないしな」
むしろ、そうでも無ければそもそも引き抜きなんて話は成立しないからな。
「まあ、普通はやりたくてやってるのではなく生きるためにやってるのが大半だろうな」
「少なくとも引き抜かれる奴は現状に不満があるわけだからな。不満も無く好きでやってる仕事を辞めたり変えたりする理由なんてものは無い」
理想の人材や理想の職場なんてものが存在するならとっくの昔に満席になってるだろうからな。奪い合いが発生している時点で理想とはかけ離れている。
「確かに現状に満足している人間が変わろうとするかと言われたら……変わらないだろうな。それに、ライバルの手に渡ったら厄介な人材を自分のところで確保しておくと言えば賢いようにも聞こえるが、実際にはかなり穴だらけな策だ。またそういう人材が出て来た時に全員確保するのかという問題が発生するわけだからな」
それはまあ、その通りだな。今年妨害できたとしても、来年また厄介なのが出てきたらそいつも回収するのかという問題は常に付きまとう事になる。とても追いつけないだろうな。




