敵に回ると厄介
「誰も得しないという点はその通りだが……ライバルの妨害なんてものは常套手段だろう」
「自分が苦しい思いをしてでも、相手がそれ以上に苦しい思いをするなら割りに合うって事か? 一番可哀そうなのは適性が無かった場合の人材だな。……まあ、全く才能を活かせないって事も無いか?」
敵に回ると一番厄介な奴を味方に引き入れるってのは、戦略としてありだとは思うが……ちゃんと仲間になってくれるならある程度は頼りになるだろう。
「敵に回ると厄介と言うのは、それだけ優秀であるって事でもあるからな。ライバル以上の環境を用意すれば、才能を遺憾無く発揮してくれるハズだ。もっとも……それが自分にとって今一番必要としている才能なのかどうかは知らんがな」
「まあ、敵に厄介な奴が仲間になるのを阻止出来たって時点で満足してしまうのももったいないわけだしな。普通に考えれば向いてる仕事を与えてそこでも才能を発揮するか」
根本的に業種が違うとかでもない限りは特定の場所でしか才能を発揮出来ないって事もないだろう。
「それはそうだろうな。敵に回ると厄介な指揮官を味方に引き抜いて鍛冶屋をやらせるなんて馬鹿な真似は出来ないだろうからな」
「まあ、普通は指揮官をやらせるだろうなその場合。仮にそいつが元は敵の指揮官であったとしても、別の仕事をやらせるのは意味が分からん。……と、言うか、そんな条件で引き抜かれるような馬鹿はいないだろうな」
「一応、元々の仲を分断する事が出来れば目的達成と考えているのであれば、嘘の条件で引き抜いてその後すぐに追い出すという事もあり得なくは無いが……ライバルのところにもいて欲しくないが自分のところにもいて欲しくない人材でもない限りは成り立たない状況ではあるな」
どんな奴か想像もつかんな。
「ライバルを妨害したいんじゃなくて、そいつを孤立させたいって目的でしかないなそれは」
「……話の趣旨は大きく変わるな。だが、あり得ない話じゃないな……実際に様々な国や組織を転々として、最後は孤立して破滅した魔術師というのも歴史上いるのはいる。もっとも……それは孤立させたくて孤立したのではなく、好き勝手やってたから孤立してしまった話だからこれも趣旨と違うものになるが」
「まあ……分断を招いているのは組織じゃなくてその魔術師の行動だろうからな」
敵に回ると厄介とかじゃなく、どこの組織にいてもその組織にとって厄介な存在っていう真逆の話になるからな。そもそもの論点が違うな。




