破格の値段
「学生に業務をやらせる事が合法なのはわかったが……だとしても何らかの契約を学生と結ぶ必要はあるよな?」
契約も無しに学生を働かせるなんて無茶は出来ないだろうからな。逆に言えば、契約さえ交わせば法的に問題無いのであれば契約しない理由が無い。
「当然、何しらの契約はしているハズだぞ? あえて聞いた事も無いからわからんが……逆に質問するが貴様はそういう契約はしていないのか?」
「俺がか? してたらこんな質問するわけないだろ」
「それはそうだが……契約の交渉もされてないのか? ……私の家の者ならその手の話をしていてもおかしくはないと思ったが……いや、そもそも剣術部との契約が成立していないのか……?」
「お前の家も、そういう事をやってるのか?」
「当然やっている。まあ、色々と制約は厳しいがな」
どうやらオリヴィエの家も学校に武器を渡して品質の底上げを行っているらしい。
「そこまでしてでもやる価値があるわけか……」
「元々が全く同じ品質であっても、『検査工程』を挟む事で製品の価格は桁違いに上がるからな。扱った者によっては二つ以上跳ね上がる場合だってある」
「百倍以上か……!?」
「場合によってはな。それだって破格の値段だ。高名な魔術師複数人と個別に契約を交わして仕事を依頼する事に比べたら圧倒的に人件費も安い上に処理数も稼げる」
確かに……学校なら検査員の人数が足りないって事にはならないのか。
「コストが安く抑えられるってわけか。仮に契約金が高名な魔術師と同額だったとしても、学校なら学生の方から集まって来てくれるからな。運搬のコストは段違いだろうな」
「ああ。個人では人から人へ運ぶだけでも費用がかさむ。それに、学生と一言で括る事は出来ないレベルで個人差があるからな。それこそ高名な魔術師と同レベルの領域に至っている学生だって少なからずいる」




