一人で作るわけ
「……だとすると、お前の母親は相当効率の悪い製造法をしている事にならないか? 複数人でやった方が良い事を一人でやってるんだよな?」
「なるな。だが、理由が無いわけではない。複数人の職人の手によって武器を作った方が良いのはその通りなのだが……それはあくまでも質の高さを追求する場合の話でな。製造の難易度は一人でやった方が低いと言われている」
「そうなのか?」
「ああ。特に一点物の武器が顕著なのだが、使用する素材から設計図まで、一から十まで把握している自分一人の方がミスも少なく済むからな」
なるほどな。人数が多くなるとヒューマンエラーの発生率が上がるって事か。
「確かに一点物だと、『いつもの』ってわけにはいかないだろうな」
「その手のイージーミスもそうだが、他にも製作者全員が素材や用途などの細かい情報を共有出来ていない場合も多いと聞く。もっとも、お母様の場合は仕事による生産の他にも開発もあるからな。頭の中に思いついたアイディアを形にするのに他人に相談していては間に合わないそうだ」
確かに、聞いてる限りじゃ複数人での製造には念入りな打ち合わせが必要になるようだな。
「思いついた時点ですぐさま行動に移すのか……」
「ああ。そしてこの手の職人や研究家気質の者は自分が納得、満足するまで自室に引きこもるなんてのはザラにあってな。複数人揃って最高の魔道具を作ろうと一念発起して本当にチームを組むところまで漕ぎ着ける事そのものがそこまで多くない」
理論上は複数人でやった方が良いが、性格的な問題でチームは成立しにくいわけか。
「ひたすらアトリエに籠って武器の制作に取り掛かっているわけか……」
「幸か不幸か、お母様は幼少の頃より財力に物を言わせて古今東西の素材や様々な分野に渡る設備……そしてそれらを一か所に集約させる事が出来るだけの十分な土地も全て揃えられる環境にあったからな。研究に没頭していたら一か月は部屋から出ないという事もあったぞ」
「食事も使用人が用意してくれるから、本当に部屋から一歩も外に出る事なく研究を続ける事が出来てしまうわけか」
健全な生活とはとてもじゃないが言えないな。ずっと部屋の中にいたら日付の感覚とか麻痺するんじゃないのか?
「その通りだ。必要な物を揃えられる財力に加えて身の回りの世話をしてくれる使用人もいる。何より幼い頃からそんな事を続けてきたのだ。何人も集まって共同で魔道具を作ろうという発想にすらならんわけだ」




