特におかしな話では無い
「まあ、どんなに小さい規模の村であっても、それなりの通貨は日常生活で必要になるからな。何かしらは売っているだろうな。そういう場所がいくつもあるというのだから驚きだな」
「……そういえば、その手の取引相手が複数いるんだったな……武器を商人からの取引で仕入れるって意外と普通な事なのか?」
「まあ、そうでなければ我が家の商売は上手く行かないわけだからな。武器をどこかからか仕入れるという行為そのものはそこまでおかしな話では無いだろう」
実際に大量の武器を売り捌いている奴がいるのだから武器の取引が日常的に一般的なのはわかるが……しかし、釈然としないのも事実だ。消耗品なのだから定期的に補充する必要があるのはわかるが、しかし、日常的な必需品というわけでもないハズだ。もしこれが魔物だとか獣だとかを相手に用いる武器ならわかる。自発的に狩をする必要があるわけだから、武器の蓄えと消費する量を記録すれば武器を仕入れる予定を計算する事が出来るからだ。しかし、これが人を相手にするものだとすると、一気におかしな話になる。防衛用なら定期的に補充する必要なんて無いし、人を襲うために仕入れているなら、狩り尽くして仕入れの必要が無くなるか、相手が対抗してきてより高度な武器が必要になるかのどちらかに偏るハズだ。
「そりゃあ、冒険者ギルドがあるような大きな街だったら盛んに取引はあるだろ。むしろそういうところで大量に売り捌くのが主な収入源だろ? だが、そういう客が多い市場だと流行り廃りが激しいハズだ。数十年も時間があれば近くに棲息する魔物だって多少は変化するものだろ」
「確かに何十年も同じものを要求し続けるのは良くわからんな。剣一つ取っても様々な種類がある。切れ味は勿論の事、長さ、重さ、材質……そして値段等で注文は変わってくる。片手剣が人気の時期もあれば両手剣が人気の時期もあるからな」
「ちょっとした武器屋に立ち寄れば、剣だけでもたくさんの種類が揃ってるからな。それこそ、お前の家で作ってる武器だって同じ武器種でも何かしら異なる武器が大量にあるわけだからな」
俺はオリヴィエが持っている武器を思い出す。武器種自体がたくさんあるのも事実だが、同じ武器種……例えば片手剣だけでも何十種類も持っている。その中でも特にレイピアは個人的な好みもあるのだろうが、俺でも見た目では違いがわからないような物を大量に持っている始末だ。あれらがそれぞれ違う商品として売られていると考えると、オリヴィエの家が扱っている商品の品数はとてもじゃないが計り知れないな。




