数十年間も続けていたら……
「何かしらの珍しい物が入手できるとして、それの奪い合いで外部の人間との戦闘が頻発しているのだと仮定すると、特に矛盾なく説明できるな」
「説明できると言っても、数十年間にも渡って外部の人間を攻撃しまくっている村って何だよって話だがな」
「あくまでも特産品を狙う連中に対しての行動だろう? 実際に私の家との交易は行っているのだから、完全に排他的というわけではないハズだぞ」
確かに……仮説の中では特産品を独占的に回収するために競争相手とは戦っているようだが、それ以外の相手とは……少なくとも武器商人とは仲良く交易を行っている事になるな。
「数十年間交易を続けているって事は、その村でも通貨は流通しているわけだよな?」
「まあ、物々交換でもしていない限りは何かしらの通貨が使われている事になるな。一つの村で独自の通貨が造幣されているとも思えんから、交易で外貨を獲得しているのだろう。交易相手を考えると、流通しているのはうちの国の通貨の可能性が高いな」
「その村がどこの国に所属しているのかにもよるが、その可能性は高いな。世界中の商人達と交易を行っているのだとしたら、量はともかく、世界中の通貨を保有している可能性もあるな。まあ、交通の便は相当悪そうだから交易相手は限られてそうだがな。お前のところと交易を行っているなら、その珍しい物ってのも取引してそうだな。何かそういうのに心当たりはないのか?」
そういった類のものが無かったとしても、数十年間も交易を続けていたら、古参の誰かが知っていたり、話を聞いてそうなものだがな。
「単に珍しいというだけのものならどれだけ取引していても不思議はないからな……漠然とし過ぎていて皆目見当も付かんな。もっと具体的な手がかりが無ければわからんな」
「数十年間取引を続けているんだから……と、思ったが、取引するようになったのはつい最近の出来事って可能性もあるしな。あてにはならんか。何にしても、数十年間も似たようなものを取引してるって事は良くも悪くも安定した村なのだろうな」
もしも人の入れ替わりの激しいような都会なら、かなり高い頻度で流行ものだとかで扱われる商品に違いが出るハズだ。そういった変化も無く、定期的に似たようなものを取引し続けるという事はそれだけ変化の乏しい村だという事が推察出来る。数十年間生活水準が変化しないというのもそれはそれで想像も出来ないが……本人達からしてみたら比較対象が存在しないから案外平気だったりするのか?




