攻撃側が有利
「侵略に失敗した際のデメリットを差し引いても条約破棄するメリットの方が大きかったわけか」
「莫大な利益を得られるからな。それに、あの時期は戦争が起こるのも時間の問題だったからな。だからこそ時間稼ぎとして条約が結ばれたわけなのだが……破棄する事前提の条約を予定通り破棄するだけだから決断も早かったようだ」
「まあ、決断が遅ければ遅い程相手に時間を与える事になるからな。最悪なのが決断が遅れた結果、相手も戦いの準備を終えてしまって、その後で自分から戦争を仕掛ける事だ。負けたとしても当然だが、仮に勝ったとしても被害は大きくなるだろうな」
攻めるタイミングを完全に逃しているわけだからな。無意味に自分達への被害を広げるだけでなく、戦略性の無さを周囲の国にも伝えてしまう事になってしまう。
「確かに自分から攻め込むと決めたなら相手が準備を終える前に仕掛けた方が良いだろうな。そして自分からは攻め込まないと決めたなら、敵が侵略するのを待ち構えた方が良いだろうな」
「ああ。攻めるなら攻める。守るなら守るで徹底するべきだろうな。そもそもどっちの戦略を取るかで必要な準備そのものが変わるんだからな」
攻めるなら、相手の城や城壁を破壊するための大砲のような破壊兵器が必要になるし、守るなら罠を仕掛けたり城壁を作ったりでやるべき事が大きく変わる。
「攻めか守りか……どっちが良いかは状況次第だな。だが、基本的には攻める側の方が良いか」
「だろうな。攻撃側にも防御側にもそれぞれメリットはあるが、この場合に関しては攻撃の方が有利だろうな。守る側はほぼ必然的に自国の領土内で戦闘行為を行う事になるから、地の利を活かしやすい。……逆に言えば、地の利を活かせないなら防御側の優位性は発揮されない事になる。不可侵条約の破棄から察するに、戦争が始まったのは条約の中にあった境界線上の話だろ?」
不可侵条約の内容から考えるに、戦争が行われるのは侵略した小国の領土内という事になる。そのような場所で地の利を得るにはまず大前提として土地勘がある事が絶対条件だ。もしも自分達よりも相手の方が土地勘があった場合、自分達が知らない抜け道を通って攻め込まれる危険性がある。そうなれば防御側の利点を全く活かせずに一気に侵略される事になるだろうな。




