何故抗戦したか
「皮肉なのは良いが、じゃあ問題なのは価値が無くなったからと言う理由で奪い合いを止めてくれるのかって事だな」
「それは、結論を言えばならなかったな。手を引く国は多かったが、侵略を止めなかった国もあったし、何より侵略を受けている国が徹底抗戦の立場を取り続けたからな」
奪う価値を失った土地を奪うために戦い続けた国もあったか。非合理的な話ではあるが、無い話では無いな。
「最後まで徹底抗戦を続けたのか。……まあ、負けたらおしまいなんだから当たり前とも思えるが……そう簡単な事じゃないぞ」
「一応、その土地を奪われたら交易ルートに蓋をされて物流が断絶されるという危機的状態ではあったから何としてでも防衛をし続けるという理由はあったぞ」
「国の事を考えたらそりゃあ、防衛すべきって話だが、中には国のためじゃなく、自分のために戦うって奴もいるだろう。そうでなくても、全戦力を注いで負けたらもう後が無いんだから、戦力を温存させようという意見だって出ていたハズだ」
徹底抗戦と言うが、もしもそこを突破されたら手も足も出せないというのはあまりにも計画性が無さ過ぎる。そこで戦う事が最も高い勝率を出せると言う根拠でも無い限りはもっとまともな場所で戦えとなる。
「まあ、確かにその土地を奪われても交易で不利になるだけだ。それが原因で即国が亡びると言う事は無いな」
「だが、全ての戦力を失うような事になれば、それこそ滅ぼされかねないぞ」
「当時どんな会話が行われたかは定かでは無いが、断固として戦う事を選んだようだ。その根拠としては西側から攻めるのと東側から攻めるのとでは難易度に雲泥の差が出てしまうかららしい」
「西側からの方が攻めやすいとかあるのか」
「ああ。さっきたとえ話で言ったな。トンネルの出入り口だと。そのたとえで言うならトンネルの出入り口に門番が立っているようなものだ。この門番はトンネルの外にいるのと中にいるのとでどっちが戦いやすいかわかるか?」
「そりゃあ、トンネルの中だろ。狭い空間の方が守りはやりやすいからな」
トンネルの外だと、最悪的に周囲を囲まれて袋叩きにされる危険性があるが、トンネルの中なら周囲を囲む事はかなり難しい。さらに門番という性質上、背後からは味方からの援護が期待できる。後ろからも敵が来て挟み撃ちに遭う危険性が低いと言うだけでもトンネルの中に籠って守りを固める意味はあるな。




