価値の暴落
「……まあ、いかなる手段を使ってでも欲しいと思ってるなら、強硬策にも出るか」
デカい企業もそうだが、組織が巨大になれば取れる選択肢というのもそれだけ増えてくる。それが国ともなれば、殆ど何でもありになるだろう。
「完全に一対一の関係ならそれで話は終わりになるが、実際には似たような事を考える国は多い。様々な国が同じことを考えているとすると、この奪い合いは争奪戦の様相を呈する事になり、最後の勝利者が最後の所有者になる」
「つまり、力だけで解決って事にはなりにくいわけだ」
「全てを敵に回した上で勝てるだけの力があるならその限りでは無いが……いや、その場合でも実際に戦って勝ち取るのと、戦いを行わずに得られた場合とでは差が違い過ぎるが……力のみによる解決というのも出来ないわけでは無いな」
そりゃあ、出来るか出来ないかの二択なら理論上は出来るだろうな。
「まあ、普通に考えたら無理だな。いくら全ての戦いに勝てるだけの力があったとしても、そんな事を続けていたらいつか限界が来る」
「その通りだ。だから大半の国は手に入れようとまでは考えなかった。要はその土地を交易の中継地点として使えれば良いだけの話だからな」
「使用料を払えば済む話ではあるな。それに対して利用者ではなく、支配者として利用者から金を徴収する方になりたいと考える者が出てきても不思議では無いが……その立場になるには莫大なコストを投じる事になる。大多数は利用者の立場を取るだろうな」
これは結局のところは元を取れるかどうかだな。戦争して侵略するなんて、巨額の先行投資が必要になる。それを取り返せるだけの利益を出せるかどうかだ。
「収益の額面だけで見れば、奪い取るだけの価値は十分にある。そのために戦火の絶えない土地であったし、何度も侵略されているが……実際にその方法を取ってしまった事で一気に価値が大暴落してしまったのも事実だ」
「そりゃあ、治安や情勢の不安定な土地は交易ルートとしては選びにくいからな」
ビジネスってのはどこまで物事を合理化するかどうかにかかっているからな。可能な限り、極限まで自動化して作業する連中には勝てない。交易ルートだって、ほぼ確実に送った荷物が送り先に届くルートと、そうでないルートとではその価値には雲泥の差が生まれるだろう。
「ああ。価値があるからという理由で奪い合っていたら、奪い合いが起こるからという理由で価値を失ってしまったわけだ。何とも皮肉な話だな」




