立地条件
「物流を断絶させるために重要な土地を侵略しようとする国まであるのか……その国からしてみたら今のこの状況は良くないだろうな」
「それはもはや問題では無いな。今となっては物流の選択肢は数え切れない程存在するからな。今さら陸路の一つを塞いだところでどうにもならん。元々は物流を止めて経済制裁するのが目的だったハズだからな」
なるほどな。当時は交易ルートを止めてしまえば相手はどうする事も出来なかったが、今となっては他の方法で交易を行う事が出来るようになったのか。
「それで、その土地を占領する必要があったのか」
「ああ。その土地の近くに山岳地帯があってな。丁度渓谷を抜けた位置に町が存在しているから、陸路で交易を行う場合、確実にその土地を通る事になる。逆に言えば、もしもその土地を抑える事が出来れば、交易ルートに蓋をして複数の国との交易を封じる事が出来たわけだ」
なるほど、それはかなり重要な土地になるな。その土地がどちらの国の領土かによって、交易可能な相手国の数が変わってくるわけか。そしてそれだけじゃない。渓谷を抜けたところにある土地という事は、その土地を拠点にしながら戦力を展開出来る事になる。これは逆に言えば、その土地さえ占領出来てしまえば、渓谷に阻まれた道からしか敵はやって来れない事を意味するから、軍事行動の観点から見てもその土地がどの国の領土なのかはかなり重要になってくるわけだ。
「……何でその土地が色んな国から狙われまくってるのかようやくわかったよ。要はトンネルの入り口みたいな状態になっているわけだ。入口と出口の管理者が同じ人物なら特に問題は無いが……もしも別の人間だったらそのトンネルを自由に行き来するのはかなり難しくなる。それどころか、トンネルのどこからどこまでを自分の土地として主張出来るかについても争う事になりそうだな」
一つの土地……拠点を占領する事でその少し向こう側にまで影響を及ぼす事が出来るとなれば、多少無理をしてでもその土地を狙う価値はあると言えるだろう。そして、そんな立地条件なら、確かに現地の人々は独立を考えたりもするだろうな。




