関わり合いたくない
「情勢が安定している限りと言うのがきな臭いが、そういうものだろうな」
「まあ、何も問題が起こらなければ維持されるだろうし、そんな状態が何世代にも渡って続けば独立しようなどという考えも無くなっていくだろう」
それはそうだな。自分が生きている間に国の名前が変更されるなんて事が起こればかなり印象に残るだろう。忘れろと言われても中々忘れられるものではないハズだ。だが、その子供や孫の世代になれば自分が生まれるよりも前の時代の話なら、独立に対して積極的になろうとする者は減っていくだろう。
「それでも親や祖父母がその世代なら当事者の話を聞いているだろうから問題は残るかもしれないが……そのさらに下の世代にもなると一気に話が語り継がれる可能性は減ってくるだろうな。また聞きのまた聞きになると、当事者の話が聞けなくなるから遠い昔の出来事のように聞こえるハズだ」
「ましてや自分の住んでいる町が栄えていればなおさらだな」
「……ちゃんと栄えているのか?」
それは少し意外だな。何度も何度も所属する国の名前が変わっていると言うから政情不安定で治安はかなり悪そうに思えたが……栄えた町になっていたとは。
「ああ。そもそも侵略する側だってとりあえず通り道だからって理由で侵略するわけではないからな。ちゃんとメリットや理由があってやってるわけだ」
「複数の国に狙われるって事は……交易ルート関連か、もしくは地下資源か」
「両方だ。確か銅か何かが採掘出来たハズだ。それを運ぶために交易ルートが作られた背景がある。……で、その土地を持っていれば交易はやりやすいし、軍事的な行動もとりやすくなる。一部を除いて殆どの国がその地域を手に入れた後で復興作業を行っているのも、展望というのがあるからだろう」
「ちょっと待て。一部を除いてって言ったか?」
「ああ。意図的に交易ルートとしての魅力を下げようとする国もある」
言い方はアレだが、苦労して手に入れたものの価値をわざわざ引き下げるのか? 何故そんな真似を?
「そんな事をしたら、収益が下がるだろう?」
「だが、交易ルートを封鎖してしまえば、他国からの進軍はかなり遅らせる事が出来るだろう? 交易する相手国も制限出来るしな」
物理的に物も情報も手に入りにくい環境を作るわけか。よほど関わり合いたくない国が隣接しているようだな。




