情勢が安定している限りは安全
「……その地域って今現在はどういう状況なんだ? 今も独立しようって動きはあるのか?」
「感情的な部分ではどうだかは知らんが、流石に今となっては下火になっているな。現実的に考えて他国からの支援なしに実行出来るわけがないのだから当然だな」
「まあ、独立するためにも、独立した後の事を考えても自分達の身を守れるだけの戦力を用意する必要があるからな……一つの地方の独力のみでそれを揃えると言うのは……無理があるな」
魔術師の力がどれだけ破格のものだったとしても、百年も二百年も国を守れるようなものではないだろうからな。それを考えればどんなに強い魔術師がいたとしても個人じゃどうしようもないな。そもそも、もし本当にそんな強い個人がいるのなら、地方の英雄とかじゃなく、国の英雄として祭り上げてしまえば良いだけの話だしな。それだけでもわざわざ国から独立しようと考える人間は減ってしまうだろう。
「今のところは現実的な話では無いな。とは言っても理論上は可能ではあるな。世界が不安定になればなるほど独立は容易くなるからな」
「人間誰だって自分の命にかかわるとなれば本気で行動するからな……国が自分達を守ってくれるとは限らないとか思えば、自分の身は自分で守ろうとなるだろうし、国もその動きに対して取れる行動はかなり限られるからな。国の内側と外側の両方に戦力は投入出来ないんだから、どちらかはおざなりになる。つまり、自分達は命懸けで全力を出せる状況で、相手が自分達に対して全力を出せない時にしか成功しないわけだ」
内側に集中し過ぎて侵略を許せば、そのどさくさに紛れて独立出来るだろうし、逆に外側に集中し過ぎれば、やはり独立が狙える。これがもしも平和な世界情勢の時にやったら、世界中がその行動に注目する事になるから、国は鎮圧に全力を注ぐ事になるだろう。
「それくらいのギャップが無ければ国を相手にして独立を勝ち取るなんて事は出来ないだろうな。そして、今現在、あの辺りの情勢は安定しているからまず成功しないだろうと言うのが一般論だ。これは当然その地域内でも一般論として認知されている」
情勢が安定している限りというのがなんとも頼りないが……まあ、そんなものだろうな。




