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崩天蛇神の秩序維持  作者: てるてるぼうず
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救出準備

「やっと放課後か」


 今日の授業も終わった。昼飯を食べていないせいですごくお腹が空いている。

 放課後は生徒会の手伝いをやることになっている。

 さっさと生徒会室までいくか。

 カルラと一緒に移動中ゲイルと鉢合わせした。


「天蓋、これから寮に帰るのか?」

「いや、生徒会室に行って手伝いだ。掃除の手伝いをしてくれだそうだ」

「そうか、じゃあ俺も手伝ってやるよ」

「いいのか?」

「ああ」

「悪いな」

「気にするな」


 そういうわけで生徒会室に向かった。


「来てくれたわね」

「会長、ここを掃除すればいいんですね?」

「そうよ、お願いするわね。ところで貴方は手伝いの手伝いかしら?」

「まあ、そういうことになりますね」


 冷静に考えると相当アホな響きだよな、手伝いの手伝いって。

 俺個人としては助かるが。


「それじゃあ、お願いね。私たちは私物を整理してるから、まずは、窓拭きから頼むわ」

「はい、ゲイル、俺は窓の外側を拭くからお前は室内側を拭いてくれ」

「ああ、わかった」


 さっそく掃除を始める。


「おい、天蓋」

「なんだ?」


 掃除中にゲイルが話しかけてくる。


「お前、本当に何もしないつもりか?」

「何の話だ?」

「とぼけるなよ。姫様救出のことだ」


 ああ、やはりその話か……、とはいえ俺がやるべきことではないだろう。


「宗教がかかわる以上俺の出る幕はないな、たとえ邪教でも。いや、邪教だからこそか」

「なんでだよ?」

「俺も邪教徒だからだ。この国の国教ではないという意味でだが」


 明らかにこの国の宗教は仏教ではないからな。


「お前宗教家だったのか? 意外だな、てっきり無神論者か虚無主義者かなにかだと思ってたぜ」


 ま、限りなくそれに近いがな。

 なんにしてもこの国の唯一神的宗教は肌が合わないのも事実だ。


「別に何でもいいだろう? 他の誰かに迷惑をかけているわけでもないんだから」

「それはそうだが、そいつらは『他の誰か』に迷惑をかけているわけだぜ?」

「それがどうした? 俺に何をしろというんだ? 宗教問題は他人が口出ししていいことじゃない」


 まして蛇神(おれ)がかかわっていい範疇を超えている。


「そのために傷ついている人がいるんだぞ!? お前はそいつらに対して何も思わないのか?」

「俺が関わったらそれ以上の人たちが傷つくことになる」


 思わないのではなく思ってはいけないんだよ。そんなことを考える資格は『俺たち』にはない。


「問題は国内だけにとどめておきたいってことか? 確かにお前みたいなこの国で生まれた訳じゃない奴には関係のないことかもしれないけどよ」

「もちろん言いたい事はわかる。自国の姫が捕らわれの身となっているんだ、落ち着けという方が無理がある。だとしても、やるべきではないことはやるな」


 出来るだけ冷静に、だが断定的にゲイルを説得する。こういう話し合いは激情に身を任せるとろくなことにならないからな。

 とはいえ、どうやらこの説得は無意味なようだ。こいつは必ず行動するな。目を見ればわかる。


「やる気だな?」

「ああ、俺一人でも行くつもりだぜ」


 決意は堅いようだな。


「わかった。俺も協力しよう」

「本当か!?」


 ゲイルは大声をだしてしまい、皆から注目される。


「静かにしろ」

「何をお話しなさっているのです?」


 カルラから質問された。こいつは出来れば巻き込みたくないな。


「ただの世間話だ」

「どんな話です?」

「貴方達しゃべる暇があったら真面目に掃除してよ」


 会長からの叱責を受け、すぐに黙り掃除に取りかかる。


「話は戻るが協力はしてやる」


 再び小声で話し掛ける。


「いいのか?」

「ああ、だが条件がある。ボルドフ姫を先に救出しに行ってからだ」

「なんで?」

「決まってるだろう。ミリア姫が美しいからだ」

「何? どういう意味だ? 普通美少女を優先するもんじゃないのか?」

「だからだ、美しい姫なら放っておいても誰かが助けに向かうはずだ。だから後回しにする。俺にとってどっちを助けに行くのも同じだからな。それなら助けの少ない方から救いに行くべきだろう」

「だがあっちの方は」

「なんだ? お前の言い分を聞くとミリア姫が可哀想って話だが、可哀想なのはミリア姫だけか? ボルドフ姫は? どうせ大丈夫だとでも言うのか」

「それは……」


 ゲイルは黙ってしまった。こっちの方は考えてなかったらしい。


「いいか、俺はお前に協力するが、優先するのはボルドフ姫からだ。俺からいわせれば容姿云々で救う順位を決めるのは気に入らないし姫である以上対等に考えるべきだと思う。文句があるなら一人で救出しに行くんだな」

「わかった。それで、いつ向かう?」

「今日だ、幸い列車で行けば今日中にたどり着く」

「わかった。じゃあ準備ができたら連絡してくれ、その後駅で落ち合おう」

「そうしよう」


 そういうわけで、二人の姫の救出へ向かうことが決まった。

 

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