敵が多い理由
「……まあ、土地が得られる最後の機会と考えれば誰も妥協はしないだろうな。しかし、国によっては飛び地にならないか? そんな土地を得ても後々面倒な事になりそうなものだが……」
「なるな。というよりもなったな。飛び地は周囲が敵国で囲われているし、そこを守るのには相当な苦労になる」
「それはそうか。狭い土地を守るのは大変だし、攻める側からしてみたら狭い土地は攻め込みやすいと言える。もっとも、そのせいで複数の国が狙っているという状況は生まれやすいが」
上手く自分の身を守る方法があるとすれば、そこら辺の膠着状態か。味方を増やすという方法もあるが……そこは大前提としてどこもやってるか。
「国土の割譲から始まった混乱は今も尾を引き続けている」
「今も?」
「ああ。何度も何度も侵略を受けては国名が変更されたからな。周辺との関係は悪いし、今までに何度も独立運動の機運は高まってきた。まあ、その全てで失敗しているがな」
「まあ、国としては絶対に認めないだろうな。苦労して手に入れたわけだろうし……それを差し引いても、独立した国のその後なんて、周辺の国と敵対するに決まっている。と、言うか……敵対しているから独立するようなものだしな」
国境なんてのは、極論を言ってしまえばその境界の向こう側には自分とは相容れない奴が住んでいるという目安のようなものだからな。
「まさにその通りだ。新しく独立した国を支援するのは、敵の敵は味方が成立するような少し離れたところの国だけだ。そういう意味ではその地域に住む人々は周辺国家の人々と対立しすぎたな。まあ、こればかりは仕方のない事ではあるがな」
まあ、独立を支援するって事は、その地域の人間と対立している人間全員を敵に回すようなものだからな。一つの国だけならともかく、複数の国で対立しているとなると、それを支援するのはそれら全員を敵に回しても構わないと言う立場の国だけだ。数は少なくなるだろうな。
「何度も侵略された歴史があるなら、そりゃあ周囲の人間は全て敵に見えるだろうな」
見えるというより実際に敵だった事があるわけだしな。しかもその地域に住んでいる人達からしてみたら、常にどこかの国の属しているという認識だろうから、敵対心は余計に強くなるだろう。




