周辺の対策
「魔物退治のための武器が戦争では無用の長物になってしまうというのは、確かにある話だな。逆もまた然りだ」
「それはそうだろうな。ネズミ捕りが他の害獣にも効果的なんて話は聞かないし、ましてや人間や魔物に通用するってのはちょっと無理のある話だ」
道具には正しい使い方ってのがある。それを逸脱した使用方法じゃ効果的な結果は出せないわけだ。
「ああ。魔物を倒せるからと言って、城壁を破壊出来るかどうかは別問題だ。それぞれにはそれぞれ別の専用の武器が必要になる。そしてそれを扱える専門家もそれぞれ必要だ」
「……魔物退治と戦争の両立は不可能だな」
「絶対に不可能というわけではないが……まあ、どちらかに専念すべきだな」
最悪なのは、軍事行動を行っている最中に魔物からの襲撃に遭うパターンだ。作戦が狂うどころか、軍が壊滅する危険性まである。さらに言えば、そうやって混乱している状況に乗じて敵が攻撃を仕掛けてくる可能性まである事と言えるだろう。泣きっ面に蜂というやつだな。
「どちらかと言うが……戦争に専念して成功した国があるのか? 魔物対策を疎かにしていたら大問題に発展しそうなものだが」
「そりゃあ……人類の歴史は長い。魔物との闘いよりも人間同士との戦いを優先した国というものは存在する。それで上手く行ったのは、強大で危険な魔物が殆ど生息していない地域の国に限るがな」
「魔物退治の事について神経質にならなくても良い国か。確かにそんな国なら戦争に専念出来そうだな」
「それに対し、相手国は魔物からの被害にも悩まされてるわけだから、今言った理論で自分の国は攻められにくいわけだ。一方的に攻撃出来るわけだな」
なるほどな。他の国は魔物対策があるから迂闊に攻め込めないわけか。そして魔物相手に戦うのには慣れていても、人間相手への戦いには慣れていない連中だ。好き放題出来るだろうな。
「魔物被害が出る地域まで侵略さえしなければ無敵だな」
「まあな。だからすぐに対策された。周辺国家が軍事同盟を結んだわけだ。同盟国のどこか一つでも攻撃されれば、同盟国すべてがその国に向けて宣戦布告する取り決めだ。逆に言えばそれだけ危険な国だったとも言えるわけだがな。国一つではとても対処出来ない問題だと認識されたわけだ」
まあ、相手は何の気兼ねも無しに攻撃して来るのに、こっちは魔物からの被害を考えながら慣れない敵を相手に戦わなきゃいけないわけだからな……同盟でも結ばないとどうしようもなくなるだろうな。そして、同盟を結んでその国を滅ぼそうとせずに守りに専念する辺り、それでも勝つ自信は無かったようだな。




