まずはインフラから
「まあ、競争相手は多い方が発展しやすいからな……もしも他の国の開拓の失敗例を調べる事が出来たなら、失敗の原因を分析出来るだろうし、それを基にして異なるアプローチを仕掛けられる。……まあ、その情報を仕入れるのだって当時としては死に物狂いだったろうが」
正直……どういった理由で開拓が失敗したのかを詳細に調べるのは現実的じゃないだろうな。そもそも人と人との行き来が命がけになるわけだし。だが、それも交易ルートが一本でも繋がれば状況は激変する。お互いに情報を交換し合れば失敗する可能性の高いアプローチのかけ方は排除されるだろうから、消去法で成功率は上がるだろう。
「確かに当時は……まあ、現代でもそうだが……国の情勢や状況を正確に把握するのは最も重要な事だからな。例えば開拓に莫大な予算を注ぎ込んでいるのがわかれば、その成功失敗の結果に関わらず隙を晒す事になるわけだからな。他国の情報を正確に掴みながらかつ、自国の情報を相手に掴ませなければ最適なタイミングで攻め込み勝利する事だって狙える」
「周辺の土地すらまともに開拓出来ないって時代に他の国を侵略するなんて可能なのか? 技術的にって意味でもそうだが、思いついても実行するか?」
近くの土地すら自分の物に出来ないって時にさらに離れた土地を手中に収めるなんて普通は考えられないような気もするが。
「あり得るな。と言うよりも開拓と侵略は同列には考えられん。何せリスクの内容も違う上に、何よりリターンが桁違いだ。普通に開拓を成功させても、その開拓した村を発展させるのには莫大な金と時間が必要になる。それに対して、すでに都市として発展している土地なら得られる利益は巨額なものになるし、仮にその土地に致命的なダメージがあったとしても、都市部にまで発展する立地なのはわかっているのだから復興もさせやすい」
「何もわからない土地を開拓するよりも利益の計算がしやすいってわけか」
確かに開拓に成功したとしてもそこでどれだけの利益を出せるかは未知数だからな。それに対して他国を侵略してそのインフラをそのまま活用出来ると考えれば、利益も計算しやすいのだろう。
「それだけではないぞ? 莫大な利益が得られるとわかっているなら、その利益のための下準備をする事も肯定される。つまりは前哨基地の建設のための予算も出るようになるわけだ」
「……国と国の間に人が住めるだけの村を……いや、軍隊を配備出来るだけの拠点を作る計画が立てられるのか」
「ああ。そしてそのリターンは拠点を作った後で行われる侵略を含めてのものになるから、拠点の設立そのものは割に合わない計画でも実行に移せるわけだ」
軍隊を動かしやすいようにまずはインフラから整備するのか。そしてそのインフラにかかる金も、その後の侵略で取り戻す前提で考えれば金がかかっても元は取れる計算になるのか。侵略のための巨大道路建設計画……侵略した後は輸送路としての運用も視野に入れれば合理的なものだな。




