もし手を引いていたら
「基本的に国内での問題は開拓事業に手を出さなくても解決していただろうな。だが、その方法だと他の国が勢力を拡大させていくのを黙って見ている事になる」
「その周辺の国々はどれぐらい開拓を成功させていたんだ？ 当時としてはほぼ失敗に終わっていたんじゃないのか？」
「ああ。ご多分に漏れずほぼ失敗に終わっていた。……が、交易が行われるようになってどんどん技術力が上がっていってな。後に大国となる国はだいたいこの辺りで開拓に成功させていた」
かなり早い段階で開拓を成功させていたのか。
「もしもこの時に開拓に力を入れていなかったら、大国と呼ばれるほどの発展はしなかったかもしれないってわけか」
「まあ、難しいだろうな。開拓に成功させている国の方が影響力は大きいだろうし、何より国の発展は間違いなく遅れる事になる。下手をすれば他の国に飲み込まれる事もありえるし、バラバラに分解していた可能性だってあり得る」
物理的に国の領土が変わっていたかもしれないわけだからな……当然、その後の歴史は大きく変わる事になっていただろう。
「結果的にその時代に開拓に力を入れていたのは正解だったわけか」
「ああ。もし開拓を諦めていたら、他の国の発展に追いつけなかっただろうな。その点は先見の明があったのだろうな。もっとも……もしもこの国が開拓を早々に諦めたのだとしたら、他の国も手を引いてパワーバランスはそこまで変わらなかったかもしれないがな」
まあ、近隣の国の行動が自分の国の政策に影響を与えるなんて当たり前の話だからな……この国が開拓事業を積極的に行っているなら、近隣の国だって警戒して開拓事業に乗り出すかもしれないし、警戒心でないにしてもカンフル剤として効果を発揮し、開拓を進めたかもしれない。つまり、この国が消極的になれば他国との競争は緩やかになり、結果として目まぐるしい発展は起こらずにパワーバランスは拮抗した状態が続いたかもしれないわけだ。
「まあ、競争相手が一つ減るわけだから、その分だけ競争は緩やかになるかもな」
「下手をすれば他の国もリスクの高い開拓には消極的になっていたかもな。そうなれば人類の発展は何年分遅れたか想像もつかないな」
