交易ルートが繋がってるなら……
「まあ、想像通り農業に適した土地は付近にはない。と言うより適してる土地は全て人類がすでに抑えている状態だ。そして肥沃な土地の近くにある農業には適していない範囲を居住区として活用しているわけだ」
「そういう事になるだろうな。つまり、居住区を増やす事は出来ても農地を増やす事は難しいわけか」
「その通りだな。現代でこそ肥料の進化などで対応しているものの……当時は農作物の収穫量はほぼ頭打ちになっていたようだ」
肥料に限界があるとすれば、残る手段は品種改良という事になる。それが出来たかと問われると……簡単ではないだろうな。
「一応、居住区を増やす事は出来たんだな?」
「まあな。それが原因で農村の人口増加が発生したのが事の発端だ。そのため食料問題が発生するのは以前からわかっていた事だったのだが……当時の解決策として現実的だったのは痩せた土地でも育てる事の出来る農作物を作る事くらいだ」
「やらないよりはマシだな。と言うより開拓が失敗する以上はそれ以外に選択肢が無いんじゃないか?」
痩せた土地で育つとすると豆とか芋とかその辺りか。まあ、食料が増えれば増ただけ人口もそれに合わせて増えそうだから結局は足りないって話になりそうだが、しばらくは何とかなりそうだな。
「現実的に考えればそれで解決していた可能性は高いぞ。だが、そもそもの話として、開拓を推し進めようとしていた国は一つだけじゃないという問題もある。現に交易ルートは『繋がった』わけだからな」
「王都の中で道を繋ぐのとはわけが違うな。それぞれの国がお互いに国内の道を整備する必要がある。つまり交易ルートが繋がるって事は、隣の国もそれ相応の発展をしている事になるな」
隣の国が開拓しまくって国力を上げまくっていると考えると……自分の国が現状維持で良いという結論にはなりにくいだろうな。圧倒的な差が出来てしまったら大国と小国に分けられてしまうだろう。交易ルートが繋がってしまって、さらにその国の情報まで入手する事が容易になってしまえば、特に為政者の立場の人間は競い合う事になってしまうだろう。それに離れたところに人が住んでいないんじゃあ、国境なんてかなりあやふやなものだろうからな。一つの国が開拓を成功しまくる事が出来てしまうと、侵略され放題になってしまうな。交易ルートなんて言う、物資を大量に運ぶのに丁度良いルートが存在するなら、戦力を運ぶのも容易だろう。




