止められない理由
「ああ。この状態を放っておけば国全体がどんどん不安定になっていくのは目に見えているな」
「しかしだぞ……そうやって人が減っていって良く開拓を続ける事が出来たな?」
「それは単純に国内の人口が増え続けていたからだな。色々と批判を受けてきた開拓だが、そうしなければ増え続ける人口に対応出来なかったという側面もある」
そんなに人口が膨れ上がったのか……まあ、平和になったばかりのところならそういう現象も起きるか。
「人が増えればそれだけ必要になる食料も増えていく。ところが畑からとれる作物には限度があるわけだから、どこかで限界を迎える事になるな」
「その通りだ。だからこそすぐ近くを開拓地とする事が出来なかったわけだ。農業に適した土地を居住区にするわけにはいかんし、何より農地や水の奪い合いになるのはわかり切っていたからな。それに、人々が生活する範囲には城壁で囲って守る必要もあるからな。土地を広げるのも楽じゃないというわけだ」
デカい都市程、それを囲う城壁は巨大な物になるだろう。つまり、土地を広げるという事はその壁を立て直す必要が出て来るという事だ。
「時代を考えれば広げた土地をどうやって守るかの方が重要になるだろうな」
「それは最も重要な部分だな。村を拡張するだけなら、塀や堀を作り直せば良いだけの話だ。しかし、それで村が一回り大きくなったとしても増えるのは住める人数であって、農作物の収穫量が増えるわけではないというのが重大だ」
「農地を増やせば良い……と言っても、楽じゃないだろうな。そんなに条件の良い土地がすぐ近くにあるとも限らんし」
普通に考えれば無いだろうな。もしもそんな都合の良い土地があるなら、最初からその範囲を領土にしているハズだ。ここからさらに増やすとなると、土地の肥沃さは落ちるだろうし、魔物等からの被害を抑えるためにより多くの戦力を揃える必要が出て来る。農業に適さない土地を増やしてそこを守るために戦力を増やしていたらあまりにも効率が悪すぎる。




