負のサイクル
「進む事も戻る事も出来ないとなれば、残された道はならず者に身を落とすくらいか」
「それ以外に逃げ道があればそれを選んでいるだろうからな。開拓に失敗してはならず者が増えると言う社会問題が発生して、当時は大変だったようだぞ」
「まあ、開拓そのものに対して否定的にもなるだろうな」
成功するあてもないのに開拓に挑戦して、失敗に終わったら治安が悪化しますじゃ、賛同を得られる道理が無いな。
「とにかく失敗する事……とりわけならず者が増える事に関してはかなり恐れていたようだな」
「それはそうだろ。自然と闘いながら人類が力を合わせて未開の地を開拓しなきゃいけないって時に、人間同士で争う事になるんだからやってられんだろ」
ただでさえ限界ギリギリの中を精一杯生きているって時に、人間が頑張って人間の敵を増やしていたら他の連中……特に魔物にスキを突かれるなんて事になりかねない。
「まあ、やってられんってのはその通りだな」
「と言うか、そのならず者どもはどうやって生き延びたんだ? 魔物やらが跋扈するような環境の中を」
「ならず者と言っても腕っぷしに自信のある連中の集まりだからな。そんなのが徒党を組めばある程度の魔物の群れ程度なら追い払える。それに、想像はつくと思うがならず者連中は農業というものをやらないからな。魔物から見ても魅力的なコロニーには思えなかったのだろう」
なるほどな。確かに魔物からしてみてもより食料の多い拠点を狙うハズだな。そういう意味では略奪で物資を確保しているならず者達の拠点に食料があるのは稀だろうな。
「魔物もならず者も目的は村が蓄えている食料か」
「そうだ。そうして村の食料が無くなると何が起こるかと言えば、新天地を求めて村からの脱出だ。要は開拓だな」
なるほどな。開拓に失敗した奴がならず者になって村を襲い、その結果、村の食料が枯渇する。人が住める数なんてのは食料によって左右されるんだから、いつか限界がきて、開拓に身を乗り出す事になる。その開拓に失敗した人間がならず者になって……それが繰り返され続けて、ならず者の数が増えて行って、村はどんどん廃れて行くわけだ。
「開拓に失敗した奴らが村を襲って、村の食料が底を尽きかけているから新天地を目指して旅立って、そこで失敗した奴らが今度は別の村を襲うわけか。社会問題にまで発展するわけだな」
負のサイクルが発生してしまっているんだ。これを抜け出すのはかなり難しいと言わざるをえないな。




