ならず者が増えた理由
「まあ、税を安くするとかでもしないと、新天地へ移住するというのはハードルが高いな。ましてや開拓まで含めるとなると……」
「並大抵の安さでは移住しようとはならんだろうな。そのため開拓を行うのは貧困層が大半だ。他にも何らかの罪を犯した人間が開拓に送り出される場合もあったようだ。まあ、要は追放だな」
「行き先が決まっているなら追放じゃなくて流刑じゃないか?」
「ん? ……いや、そういう細かい部分は良くわからないが……今後一生そこで生活しろというわけでもないのだから流刑には該当しないのではないか?」
確かに……開拓している村から一生一歩も出るなとか、そういうものだったら流刑になるだろうが……この場合は追放刑になるのか? 基本的に罰というのは不自由な程重い罰という事になるからな。『この国にいるな』と『この土地で生活しろ』とでは行動範囲の観点から見て後者の方が重い罰を与えられている事になるな。もっとも……開拓をしている土地に移住させている時点でそこ以外に生活する選択肢があるのか甚だ疑問ではあるから、実質的には流刑みたいなものか。
「国に戻る事は出来ないにしても、開拓中の土地とは別の場所へ移住する事は理論上可能ではあるなら流刑にはならない……のか? 何にせよ、開拓に向かうのは弱者側の人間か。一発逆転を狙って移住するわけだ」
「他にも国の中での生活に限界を感じて開拓に乗り出した者も多くいたようだが……基本的には生活に困っている者達だな。そして、そういった者達が多かったからこそ、シンジケートの勢力が拡大する温床になったとも指摘されているな。自分から国に見切りをつけたか、送り飛ばされたのか。どちらにしても国への帰属意識など皆無に等しいだろう」
なるほどな。シンジケートのやってる事は国益を損ねる可能性が高いわけだからな。上の連中が何をしてようが、末端は国がどうなろうが知った事ではなかったわけだ。
「国に対して不満があったのか……まあ、あるだろうな」
「仮に開拓に失敗したとして、その後で国に帰れるかと言われたらそんな事はないだろうからな。物理的にも帰れないだろうし、帰れたとしても生活はままならないのは目に見えている」
それで、ならず者に身を落とす奴が多発したわけか。先に進む事が出来なくなって、戻る事も出来ないとなれば、後は道を外れる以外に選択の余地は無いな。




