人を集める難しさ
「そこまで成功率の低い状態から交易ルートを繋いだとなると……確かに奇跡とも呼ばれるだろうな」
「しかも途中からシンジケートからの妨害もあったわけだからな。もっとも……この妨害があったからこそ国の中枢でも対立構造が作られて支援者が増えたという側面もあるからこれが良く働いたか悪く働いたかは定かでは無いがな」
「まあ、そこはピンチをチャンスに置き換える事が出来た開拓者達の力量を褒めるべきだろ」
妨害工作を働いて下手に刺激したせいで無駄に敵を増やしたと聞けばシンジケートの失策だったで終わりそうだが、ことはそう単純な話でもないだろう。誰だって負け戦はしたくないし、勝ち馬に乗りたいと思うのが普通だ。つまり、シンジケートに敵対すると決断させる程の何かが開拓者達にはあったわけだ。
「だな。それだけ味方を作るのが上手かったのだろう」
「もっと広い意味で言うなら、人を集めるのがずば抜けて上手かったのだろうな。でなければ開拓を終えた村のさらに向こう側を開拓するって時に人が集まるわけがないからな」
未開の地を人の住める村にまで開拓させるなんて真似、少数精鋭で出来るわけがないからな。ある程度の頭数は必要になる。問題なのはそれをどこで集めたかだ。何せ出来たばかりの村のさらに奥地の開拓だからな……出来たばかりの村から人材を引き抜くにしても何人もは不可能だ。そんな事をしたら出来たばかりの村が維持出来なくなる。つまり、安全の確保されている国の中から未開の地に移住して来る人間がそれなりの数いたという事を意味する。これは信じられない事だ。完成した村に移住ならともかく、安全など何も保障されていない未開の地へ移住するなんて貧乏くじ以外のなにものでもない。
「確かに。開拓の成功率の低さ……失敗した時の危険性を考えれば無謀と言われてもおかしくは無いな」
「しかも未開の地に永住覚悟で移るんだろ? 上手く成功したとしてもかなりキツイ話じゃないか?」
「そこは、税をかなり安くする事で国が移住を促したという点はあるな。まあ、それが原因でシンジケートが作られると言う痛恨のミスを犯してしまったわけだが」
国からの制限が緩い分、現地の統治者には強い権限が与えられるわけだからな。それが怪物を生み出してしまったのだろう。




