どんどん下がる成功率
「古い情報は破棄されたから殆ど残っていないわけか。もっとも……仮にすべて残っていたとしてもそこまで詳細な記録でもなさそうだが」
「無いよりはマシと言ったところだろうな。後は独自で調査していたか……だとしても正確な情報は手に入らなかっただろうな」
「だろうな。未開の地の調査って方面でも有能ならともかく、それでも交易ルート開通後の調査に……人海戦術に勝てる道理が無い」
「当時そこまで正確な記録を残す事が出来たなら、それを残していない理由が無いからな。因みに開拓中に周囲の調査は幾度にも渡って繰り返し行っていたようで、その時の記録は残されているぞ。当時としてみてもそこまで精度の高いものでは無かったが……回数を重ねる事でカバーしていたようだ」
当時の水準で考えても精度の低い記録か……まあ、開拓している時に最高水準の観測方法が出来るわけもないし、当然の話だな。
「まあ、物見やぐら一つ作るのにだってかなりの苦労があるだろうからな。生活に必要な施設の建設に防衛施設……最低限度の生活基盤を構築してからの話だろうな。本格的な調査は」
「その調査も村の有志を集めて行ったものだ。一応、索敵魔法に秀でた魔術師がいたからその人物を中心に行われたようだが……専門の調査チームと比較したら信頼性に欠けるものだったようだな。だが、回数を重ねる事で精度を上げて行って、開拓が完了する頃にはかなり正確にわかるようになっていた」
開拓の終盤までずっと定期的に調査を行っていたのか……かなりの危険分子が近くを徘徊でもしていたのか? ……いや、違うな。確かその人物が開拓した村は人つや二つでは無かったハズだ。
「つまり……次の開拓地を探していたのか。交易ルートを繋ぐつもりが当時からあったのだとしたら、候補地選びはかなり重要だ。何せ次の開拓はその性質上、自分が開拓した村を国からの支援の中継地点として使う必要があるわけだからな。当然、最初の開拓地よりも国からの支援が届くのには時間がかかってしまうだろう」
物理的な距離から考えても国から支援が直通で来る事は無いだろう。輸送コストの面で考えればすでに完成している村を経由した方が明らかに楽だ。
「そういう事になるな。国からのあらゆるバックアップが遅れる事になるから、開拓の成功率は著しく下がる。そしてそれが成功したら、さらに次の開拓という事になるのだが……そこの成功率はさらに下がるわけだ」
ただでさえ低い成功率がどんどん下がっていくわけか。そりゃあそんなのを繰り返し成功させて隣国まで交易ルートを繋げたとなれば、奇跡とも言われるだろうな。




