運も実力の内
「まあ、過去の人間を評価するのと現在の人間を評価するのとでは色々と違いがあるだろうな。過去と現代じゃ価値観も違うが……それ以前の問題として、過去の人物と違って今現在生きている人物が明日何をするかは知りようが無いからな」
「未来の功績まで含めて評価を考えるなんて事は未来予知でも出来ない限りは不可能だな。しかし、占い師からの評判を参考にするというのもバカげた話だ」
「極論を言えば、明日偉業を成し遂げる奴の今日の評価は比較的低いハズだしな。それこそ明日の大会で誰が優勝するかで評価は一気に変動するわけだろ?」
そしてそんな優勝者だって、その後の人生で何かやらかせば評価は下がる事になる。これは逆も言える。たとえ今回の大会で敗退してももっと後の人生で何かを成し遂げれば評価は上がるだろう。
「それはその通りだな。基本的に過去の人物は過去のある特定の時点を切り取って評価される事になるわけだが、現代の人物は現在進行形で評価が更新されていくわけだ。そこからさらに価値観の変化まで含めたら……人々からの評価なんて二転三転するだろうな」
「当時の王様だってそうだろ? 結果的に開拓が上手く行ったから評価されているのであって、失敗していたらその評価は地の底……いや、下手したら高い低いの評価も下されなかった可能性まであるハズだ」
「……まあ、そこ以外にも国は存在するわけだから、人類絶滅まで行くかどうかはさておき、国が滅べばその国の王の評価は低くならざるを得ないな。確かに、記録すら残らない程風化してしまったらもはや高いも低いも言及できないな」
もっとも……運も実力の内と言うし、究極的には国が良くなれば王様の人となりだとか性格だとかなんて些事に等しいがな。それこそ国民だってどこまで把握しているか怪しいものだ。




