当時の評価
「様々な人間が集まってきたところで、結局領主になれるのはただの一人……誰が領主になるかで揉めたのだろうな」
「そこはあまり揉めなかったんじゃないか? 最初期から繋がりのあった人物が領主になったと聞くぞ」
「そうなのか? ……まあ、そこに関しては一番信頼のおける人物を領主にするだろうからその時の都合で変化するようなものでもないか」
流石に一番関係の深い人間が入れ替わる事はそう簡単には無いな。
「揉めるというか、熾烈な争奪戦になるのはもう少し下の役職だろうな。その肩書の名前まではわからないが」
「まあ、それっぽい名前の肩書さえあれば問題ないわけだからな……」
「一応、れっきとした名前のある肩書と言うのも存在はするのだが……そっちの方はれっきとするだけの存在理由があるわけだから誰でも名乗れるものではないな。例えば村の防衛に関する役職が幾つかあったハズだが……いくら発展しているとは言っても不定期に魔物が襲って来るわけだから、流石にそこは実力で選ばれていたようだ」
暗にそれ以外の役職は実力で選ばれていないと言っているな。
「不定期とは言っても、実際に襲撃はあるわけだからいい加減な奴がそういう役職に就くと大惨事にないかねないわけか」
「そこは当然の話だな。村の中が安全だと言っても、村から一歩でも外に出ればそこは危険と隣り合わせだ。だからこそ開拓が中々進めなかったわけだからな」
開拓を進めようにも、常に魔物に襲われるリスクがあるせいで失敗続きだったようだからな。
「村から一歩でも外に出たら魔物に襲われる危険性があるって事は、つまりは魔物が村のすぐ近くを徘徊する事もあったわけか……まあ、中に引きこもって居ようとするのが出て来るのも頷けるな」
「それはあるな。実際のところ、開拓に精力的だった国王に対して現実が見えていないと非難する国民は多かったようだからな」
「まあ、王様が住んでる場所なんて国内で一番安全な場所なわけだからな。そこで声高に開拓を叫んでも国民の心には響かないか」
「それどころか、安全な場所で国民に危険な真似を押し付けていると見られて国民からの評判はそれほど高くなかったようだ。後世の人間は高い評価を下しているが……まあ、人物評なんてそんなものか」
時代によって評価が変わるなんてよくある事だからな……それこそ、当時の時点において開拓を進める事がどれだけ重要だったかなんて現代の人間なら常識レベルで理解していたとしても当時の人間にそんな事はわかるわけがないからな。現代人から見たら過去の出来事だから一目瞭然だとしても、当時の人間から見たら未来予知になってしまう。ぶっちゃけ、その王様が現代において高い評価を得られているのは単に開拓が成功したからであって、もしも失敗に終わっていたら散々な評価を受けていただろう。




