誰が統治するか
「まあ、いつでも介入出来るという油断はあっただろうな。実際に介入そのものは出来ていたからな。問題があるとすれば、シンジケート側の理屈で行動してしまった事か。開拓した土地の権利書は国に売って金にするわけだが……土地の権利書を売り渡してもその土地を実効支配するのは、開拓を行った者が治める事になっている。一応、領主が任命されはするのだが、儀礼的に存在しているだけで実権を握っていたのは開拓者だったようだ」
「まあ、その土地での具体的な仕事を把握しているわけではないだろうからな。そんな初心者に任せるよりも、今までその村を発展させてきた開拓者に任せてしまった方が合理的だな」
「そうなると、その新しく出来た村の領主は……極論を言ってしまえば誰でも良いという話になってしまうわけだ」
……まあ、本当に誰でも良いってわけではないのだろうが、仕事の量は少なくなるだろうな。
「誰でも良い……より正確な表現をするなら、誰が領主をやっても問題が起きにくいわけか」
「そうなると、新しく出来た領地を誰に治めさせるかの決定権は王様にあるのだが……王様の方も完成後の統治で失敗しては元も子もないという点を理解していたのと、無駄な軋轢は避けたいとも考えていたせいで、開拓者からの意見を取り入れようとしてしまったようだ」
「つまり、村を開拓したその開拓者からの推薦がそのまま通るような状態だったというわけだな?」
「そこで、開拓者に取り入ろうとする者が現れたわけだな。正確には開拓を成功させる前から接触そのものはしていたようだが」
王様の立場からすれば、領主は誰でも良い……出来れば開拓者とは対立する事なく統治をして欲しいと考えているならば、その開拓者と面識のある人間から選ぶという事は十分予想することが出来そうだ。その点にいち早く気が付いた人物が開拓者を訪ねたとするなら、開拓を成功させる前から集まってくるだろうな。
「上手く行けば自分が領主に……そうでなくても交易ルートが開通して国の経済ががらりと変わるという予想があれば、仲良くしておいて損は無いな」
「シンジケートが誕生した瞬間でもあるわけだな。金の匂いに釣られて様々な人間が集まってきたようだ」
領主になれるかどうかはではかなり話が変わってくるな。しかし、領主になれるのは一人だけ。つまり、シンジケートでの派閥争いや序列争いはこの初期段階においてすでに形成されていたという事か。




