どのみち手遅れになる
「まあ、すぐに潰せると思っていたのだろうな。実際、成功するとは思われてなかったのだろう?」
「良くて小さな村が一つできる程度だろうな。この程度では潰すどころではない。歯牙にもかけないといったところだろうな」
「新しい交易ルートを構築するなんて計画は開拓を行っている本人ですらいつから考慮していたかわかったものではないな」
まあ、最終的な夢……というか、究極的な目標としては最初から思い描いていたとしてもおかしくは無いが……現実味を帯びてきたのはもっと後の話だろうからな。
「計画の事前察知は不可能だろうな。まず第一に金の流れが存在しないのだから外部からは調べようがないな」
「確かに……交易ルートを構築するなんて遠大な計画を実行に移すなら、それ相応の準備が必要になる。せめて資金は集め続けなければどこかで停止せざるをえなくなる」
「国の中枢にどれだけ協力者がいたとしても、金や物資が計画的に集められていないのであれば、気が付くのはかなり難しいだろうな」
「逆に、そういった事前の動きというものがあったとしたら、シンジケートは動けていたのか?」
「……難しいだろうな。どのみち手遅れになるまで様子見を続けていたかもしれん。何やかんや言っても、大規模な開拓事業を手掛ける事が出来るのは自分達だけだという自負はあっただろうからな。それを考えれば自滅するのを待つか、もしくは自分達がその計画を乗っ取るくらいの事しか考えていなかったと思うぞ。……まあ、成功するとは思わないだろうから乗っ取ろうとすら考えないんじゃないか?」
敵対勢力が莫大な資金を投じて何らかの計画を遂行している場合、最も効果的なのは早急に計画を破綻させる事ではなく、いかに無駄な金を使わせるかだからな。注ぎ込んだ金を膨れ上がらせる事で計画を止められなくして……最後に潰すか、もしくは金を貸し出して計画に関わった方がりこうというものだろう。
「……まあ、そもそも成功するとすら考えていないなら関わろうともしないか。向こうからしてみたらいつでも介入出来るという余裕はあるだろうからな。……ましてや金も物資も集まっているわけじゃないって状況で警戒しろと言う方が無理のある話だな」
初期段階で開拓事業の存在に気が付くのですらかなり厳重にアンテナを張っておく必要がある。そしてそれが上手く行ったとしても、小さな村が一つできるだけ……自分達にとって不利益になる事が無いのにわざわざ介入するだけ手間だと考えるのが普通だな。




