人数制限
「まあ、支配階級の人数が増えれば増える程一人当たりの取り分は相対的に減っていくわけだからな……そう簡単には増やそうとは思わんだろう」
「そういう事だ。シンジケートに所属して得られる利益というのは階級によって厳密に決められていて、それぞれの階級には人数制限が設けられていたようだ」
その限られたイスに座れる奴だけが利益を得られるわけか。
「業績を伸ばそうと思って伸ばせるようなものでもないからな。人数制限は当然だな。そして、末端の者が上へのし上がるには、上にいる奴を蹴落とすしかない」
「そして上に行けば行ったで、上にいる者だけでなく横に並んでいる連中を出し抜き蹴落とさなければならないわけだ。そりゃあ派閥も生まれるというものだろう」
まあ、一人の力じゃどうしようもなくなるだろうな。
「有力者に人が集まるというだけでなく、共通の敵を作るというだけでもある程度の効果は期待出来そうだな」
「ああ。派閥に所属していない者を攻撃するという目標があるだけでも、かなりまとまっていられるからな。それに加えて蹴落としやすい勢力がいるうちは安泰と言っていいだろう。つまり、新入りが潰されやすいというわけだ」
「出世しても、その中ですぐに派閥に入れなかったらすぐに蹴落とされるのか。しかし、派閥に入ったら今度はその派閥内で序列争いをする必要が出て来るわけだ。確かに出世は難しくなるだろうな」
同じ階級の中の集まりでさえ上下関係が生まれるわけだからな。そこでも順位争いをする事になるのだからより上へは行きにくくなっているわけだ。
「そういうわけだな。そして、上に行くほど不労収入の側面は強くなっていくわけだから、一般的な仕事とは違って身内に後を継がせやすい事になる」
「上はいつまで経ってもいなくならないわけだ。そうなると、後追いの奴ほどまともな競争は出来なくなってくるわけだな」
結果的に別の組織が出てきたらそっちに人が流れるようになっていってしまったわけか。
「まあ、そこまで停滞するより先に開拓を成功させた者が出て来たから、シンジケートが崩壊するのはもっと早かったがな。内側が強固になり過ぎると外部からの衝撃に脆くなるようだ」
……まあ、内側の人間に対してかけられる圧力が全く通用しないわけだからな。そうなれば、交渉の方も上手く行く道理が無いな。そもそもの駆け引きの材料が違い過ぎるわけだし。




