繰り返される逮捕劇
「もうすでに国が回収している……か。まあ、それはそれで陰謀論としては成り立つか。インパクトに欠けるがな」
「まあ、実は国が回収していたとして、だから? って話だからな。その財産を国の誰かが着服したとかなら話の一つも作れそうだが……仮定に仮定を重ね過ぎだな」
陰謀論として話を盛るなら、当時シンジケートが所有していた何か、とてつもない財宝を国が所有するようになったとか、そういうレベルの創作が欲しくなるな。
「まあ、普通に考えたらあるわけないか。シンジケートだって崩壊する前には開拓事業の妨害だとか、そのための手回しのために何かと金をバラまいていたからな」
「流石に無理を通すには金が必要か」
「ああ。だからこそ壊滅後の捜査や、上級幹部の名簿の発見後の騒動は大変な事になったからな」
「なるほどな。金を大量にバラまいていたせいで証拠が残りまくっていたのか」
「ああ。シンジケートの拠点から帳簿が大量に発見されたようだぞ。そのせいで大量の一斉捕縛が何度も行われた」
何度も行われたって事は、何度も帳簿が発見されたって事か。そして、その度に逃げ切った連中がい続けたわけだ。
「最初に捕まった団体とかが告げ口というか……司法取引みたいな事はしなかったのか?」
「当時は司法取引などと言う制度は無かったからな。まあ、減刑狙いでいたのはいたが、それでも後から発覚した事件に関して口を割る者はいなかったようだぞ。そのせいで何度も捕まった者もいた」
再逮捕者まで出たのかよ……まあ、バレずに済みそうなら下手な事は何も言わずに黙っておくか普通。
「二度も捕まったらいい加減懲りて洗いざらい喋る奴が出てもおかしくはなさそうなものだがな」
「甘いな。そんな奴が何度も不正を働くわけがないだろう。三回も四回も捕まってその度に裁判にかけられた連中なんて片手では数え切れない程いるぞ」
「それもはやわざと泳がせて捕まえ直してるだろ……」
最初の一回目で全部自白しておいた方が懲役期間は短く済んだんじゃないのか? まあ、バレるとは思わなかったのだろうな。
「まあ、何度も捕まえて罰金刑したかったというのはあるかもしれないな」
「ん? 懲役刑にはならなかったのか?」
「ああ。複数に渡って……様々な件で金が渡っていた事から察しているとは思うが、かなりの有力貴族だったからな。権力や金の力で懲役は避けたようだ。……まあ、晩年には財産の殆どを失ったがな」
国も搾り取る気満々で余罪の追及をしなかった可能性が出て来たな。まあ、貴族相手にそこまで詰問出来なかったという可能性もあるが。




