隠すより使う方が楽
「……まあ、隠し財産が秘匿されたものである以上、その存在を把握している者はシンジケート内でも限られているだろうし、ましてやそれを管理するとなると必要最小限の人数しかいないだろうな」
つまり誰が、どこに、どれくらいの財産を隠したかなんて事は本当に限られた人数しか知らない事になる。
「それだけじゃないぞ。一言に隠し財産と言っても、それが組織が隠した物なのか、それとも個人が隠した物なのかでも話は変わってくる。貴様も何となく予想はつくだろうが、当然個人が隠せる財産なんてものには限度というものがあるわけだ。そもそも、財産を隠す理由なんて何かあった時の逃亡資金か、国からの税から逃れるための脱税のためかのどちらかだからな」
「そりゃあ、そのどちらかになるだろうな。組織が隠す財産だって似たようなものだ。……まあ、それが組織的なものの場合、そこにもう一つ別の理由が加わるだろうがな」
「別の理由だと? それはいったいなんだ?」
「シンジケートにも派閥争いは存在したんだろ? だったら、反対勢力に金を使わせたくはないハズだ。特に支配階級が別の派閥になる時はな」
本来自分が使えるハズだった金が、敵対勢力の手に渡ると考えたら、何らかの対策は講じておきたいところだろうからな。
「別の勢力に自分達の資金を使わせないために隠したと言うのか? ……まあ、ありえない話ではないとは思うが……そう上手く隠し通せるものなのか?」
「まず無理だな。だいたい、組織にどれくらいの資金が残っているかなんてある程度は推測できるハズだ。そこから大きくかけ離れた資金しか残っていないとなったら、誰かがどこかに隠したと考えるのが普通だろう。だから普通は隠さずに使い切ってしまうのが一番手っ取り早い。それなら資金が残っていないのがまるわかりだからな」
下手に隠そうとするから、探し当てられるなんて最悪の結果を出してしまうのだ。使い切ってしまえば、少なくとも敵対勢力に使われるという事そのものは避けられる。まあ、その場合、資金の運用方法に関して敵対勢力がどこまで口出し出来るかでかなり変わってくる問題ではあるがな。




