もしかしたら生き残りがいたかもしれない
「今まで持ちつ持たれつの関係だったのに、危機的状況に陥ったら保身のために口封じか。……まあ、組織の行動としては間違っていないのかもしれないが……」
「互いに互いを利用しているという関係だったのだろう。逆にギルドの方が何かやらかした際に庇ってくれるかどうかという問題でもあるしな」
お互いに利用価値があるから協力していただけで、利用価値が無くなったと判断したら即座に切り捨てる腹積もりだったわけか。
「お互いに手を切る準備はしていたって事か」
「そういう事だな。国外逃亡に上手く成功した者もいるにはいるが、かなりの数が行方不明になっている。もっとも……逃げた後は隠遁生活になるだろうから、行方不明扱いになっている事を含めての依頼だったとも考えられるがな」
まあ、捕まらない一番確実な方法は死んだと思わせる事だからな。すでにこの世にいない者を探し出すというのは至難の業だ。時間の経過によって痕跡がどんどん減っていく上に、痕跡や目撃証言が増えるという事は無い。ましてや当時は人類が気軽に踏み込めないような未知の領域が大量に残っているような時代だ。捜索は不可能と打ち切られた事だろうな。
「死んだと判断されて捜査が打ち切りになれば、その時点でほぼ逃げ切りが確定するわけだから、出来る事なら死亡扱いになってくれた方が本人にとっても助かるだろうな。そして、正確には生死不明のまま事件が闇に葬られていったわけだから、陰謀論がいつまでたっても残り続けてしまったわけか」
「そういう事だ。あの時誰かが匿って、その後は名を変え顔を変えて生き続けたとな」
もしかしたらあの時生き残ったかもしれない……と、言うのは歴史を語る上で欠かせない部分だからな。死んだと確認されたわけではないのであれば、ほぼ確実に浮上する説だな。
「だが、ただ生きてるだけじゃ陰謀にはならんだろ? 生き残った後で何かしら暗躍していないと話が続かなくなる」
「まあな。だからこそ与太話にしかならん。歴史的には死亡したと考えられていたが実は生きていた。ここまでは百歩譲って良いとしても、その後の暗躍など容易く出来る事では無いからな。まず死亡扱いである以上は表向きに存在する財産を使う事は出来ん。つまり隠し財産という事になるが……この隠し財産と言うのがどこまであるのか甚だ疑問でな。シンジケートの支配階級にいた者なら莫大な隠し財産を持っていても不思議ではないのだが……そいつらは全員捕まっている。つまりその財産を管理していた部下でもない限りはそんな陰謀論は成り立たないわけだ」
まあ、理論上いてもおかしくはないわけだから、陰謀論としては盛り上がるだろうな。しかし、じゃあ現実的に考えて隠し財産を使えるかと言われると、かなり難しいと言わざるを得ないな。そもそも隠し財産の管理者なんてかなり信頼された一部の人間だけしかいないハズだからな。




