わざと捕まったか否か
「情報を託した相手が信用出来るかどうか怪しいとなると……結局は自分自身しか信じられなくなるわけだな。国が信用出来ないとすると……わざと捕まるというのも理に適っている……のか?」
「本当に信用出来ないなら裁判無しで懲役を受けるとか、暗殺されるとかの話になってくるが……流石にそこまでの事はしないだろうという信頼はしていたのかもな。それでもまともな精神では無いが」
まともな精神をしていないというのはまあその通りだな。
「そもそもの話、そんな迷惑行為なんてしてたら本当に証拠があったとしても周囲から白い目で見られる可能性はあるからな。それこそ裁判の論点がそこじゃない事になりかねない」
「確かに事の真偽ではなく迷惑行為そのものに対してが逮捕の理由だったとしたら証拠に関しては深掘りされないだろうな」
「それを考えると、スキャンダルの証拠云々を論点に誘導したのだとすれば大した知能犯だな。まあ、実際にはそいつの頭が良いんじゃなくて、捕まえた奴がやらかしたのだろうがな。……いや、それを捕まえた奴のせいにするのは筋違いか。まさか本当にそんな事をやってるなんて普通は考えないしな」
陰謀論染みた事を言ってる奴を捕まえて、そこまで言うなら証拠を出せと要求するのはそこまで不自然な話でもないだろうしな。それで本当に証拠が出てくるなんて思ってる奴は当事者すら予想もしなかった事だろう。
「まあ、証拠を出された連中からしてみたら不意を突かれたようなものだな。実際にそいつを捕まえるのも、裁判に携わるのも、その者達からしてみたら下っ端も下っ端の連中だからな。秘密は知っている者が限られているからこその秘密だと言うのに、そんな末端にまで情報が行き渡っていたら、それはもはや公然の秘密というものだ」
「当時の司法制度がどのようなものだったのかは知らないが、内容が内容だけにどっかの地方の裁判所で行われた裁判なんだろ?」
「ああ。小さな地方裁判所で行われたんだが、そこでまさかの被告人側の勝訴となってしまってな。その時はまだ地方紙の小さな記事に載るばかりだったのだが、控訴した事で一気に都に知れ渡った。証拠が捏造されたものかどうかが争点になったのだが……認知された事で検証する者が出始めてな。そこからは裁判の結果が出る前に大騒動に発展した」




