秘密は他にもあるかもしれない
「……まあ、そんな事は滅多にない……と、言うか常識的に考えればあり得ないからな。本当に確たる証拠なんて物があるなら普通は然るべきところに証拠を出すだろ。良い意味でも悪い意味でもな」
それか脅迫のネタとして使うか、もしくは面倒事に巻き込まれないように一生黙っておくかだろう。証拠を持った上で愉快犯のように振る舞うのは意味が分からん。
「それが普通だとは私も思うが、国の秘密を暴くという状況だからな……その然るべきところと言うのが信用出来なかった可能性はあったとは思うぞ」
「……確かに信用出来ないかもしれんな……国と言っても派閥争いやら何やらで決して一枚岩では無いのだが……それを信じるかどうかは別問題だしな。それに、誰に証拠を渡せば安心かも一般人にはわからない話だな」
俺だってどっかの政治家のスキャンダルのネタを掴んだからと言って、じゃあその情報を誰に渡せば良いかなんてわからないしな。政敵だから失脚狙いで公表するという程単純な世界ではない。それこそそいつを脅迫して有利な条件を手に入れたり……味方に引き入れるという事もあるだろう。あるいは恩を売る事もあるかもな。そういう意味では誰も信用出来ない世界ではある。
「表向き敵対しているから安心して証拠を渡したら、実は裏で手を結んでいた……なんて事はありえない話じゃないだろうな。もしそうなったら、その証拠を誰がどのような形で入手したのか、その経緯まで知られる事になりかねない」
「恐ろしい話だな……味方だと思ってた奴が敵で、上手く活用してくれるどころか逆に利用されるとは……一番酷いのはそれが想像じゃなく実際にあり得る出来事だってことか」
「まあ、自分の握っている情報がその人物の秘密の全てだという前提が成り立たない限りは他に秘密があってもおかしくは無いからな。当然、自分が情報を渡した人物にだって何かしらの秘密を持っている可能性はあるわけだ」
その秘密が裏で繋がっているという、別のスキャンダルだという可能性もあるわけだな。当然、その可能性はゼロには出来ないわけだ。何せスキャンダルになる情報を自分が握っている以上、それ以外には一切存在しないだとか、自分が信じている奴には一切無いだとか、そういった理屈は通用しないからだ。自分が知りえた秘密以外に秘密は存在しない……自分が騙される側に回る事などありえない……なんてバカバカしいにも程がある。




