あふれ出る偽物
「国からの追求から上手く逃げおおせた連中や、そもそも疑惑すら持たれずに済んだ連中からしてみたら気が気じゃないだろうな……秘密を知ってるかもしれないって状況は」
「本人からしてみたら事実を告げられているわけだからな。証拠を持っていないだろうと思ったとしても、脅迫されたら無視は出来ないだろうな」
「まあ、その脅迫してきた奴が元々どういう地位にいた人間なのかでもかなり変わってくるがな」
流石に末端の人間が何を言ったところで与太話として誰も聞く耳を持たないことだろう。だが、もしもその発言をした人間が組織内でも高い地位にいたとしたら……さらに言えば、社会的地位も併せ持つ人間だったとしたら、信ぴょう性は一気に増すだろうな。
「それはそうだな。自称シンジケートの構成員と名乗る者が出て来たとしても、誰も信用しないだろうな。逆に、極めて高い地位にいたと自称する人間が名乗りを上げてきてもそれはそれで困った事になる。何せもしそれが本当なら捕まえる必要があるからな。それなら何も言わない方がマシというものだ」
「信用されないか、信用されたら捕まるか……愉快犯は出てきそうだな」
「定期的に現れるな。現在でも時々見かけるぞ。関係者の子孫を名乗る者が。当時から本人を名乗る者は殆どいなかったが、その子孫を名乗る者はどういうわけか大量にいた」
「……まあ、それはたくさん出てくるだろうな……」
本人を名乗りでもしたら、もしもそれが嘘だったとしても下手したら捕まりかねないからな。そこら辺のリスクを考えたら、それなりに近い親戚辺りを名乗るのが一番だろう。
「シンジケート壊滅した当時はそれこそ数え切れない程の人数が出て来たようだな。その一人一人を調べていって……徒労に終わった結果、いよいよ国が厳罰化する法律を制定して施行した事でようやく数を減らす事に成功した事例があるからな」
「……当時ってまだまだ人類は発展の途上だよな? よくそんな真似をする余裕があったな」
「それだけ情報も拡散しにくいからな。極端な話、小さな村なら嘘をつき通す事も出来たわけだ」




