組織の変化
「まあ、真意が何であれ、二つの国の関係を取り持っていたのであれば、相応の評価はされるだろうな」
「その結果として最大規模の交易ルートの開通にまで漕ぎ着けたわけだからな……その手腕は恐るべしとしか言いようが無いな」
「シンジケートが交易ルートの開通のために国の中枢に潜り込んだとしても、交易ルートの開通後にシンジケートが結成されたにしても、どちらにしてもとんでもない話だな」
前者ならとんでもない計画性だし、後者なら極めて優秀な奴がそれぞれの国に最低一人……つまり合計すれば二人以上いる事になるからな。
「一般的にシンジケートの成立は自然発生的なものだとされているが……その原型となるような組織があったとしてもおかしくは無いな。流石に全てが計画されたものだとは思えないが」
「計画はあくまでも交易ルートの開通までだろうな。国内の流通を完全に掌握するだけでも絶大な富を築き上げる事が出来るわけだしな。それを達成させるためにクリアしなければいけない条件は山ほどあるがな……」
まず大前提として、お互いの国で開拓がある程度成功している必要がある。ルートを繋ぐための中継地点が無いようでは話にならないからな。その次にようやく交易ルート建設のための計画を立てて……実行に移すには国からの支援は必要になるだろうな。と言う事は国のお偉いさんを説得するだけの話術も必要になる。これらをお互いの国でそれぞれ上手くまとめ上げる必要があるわけだ。
「そういう意味ではシンジケートの最初の功績は掛け値なしに偉業とされている。……もっとも、その時点ではシンジケートは成立していなかったとする意見が主流だが」
「まあ、その時点でシンジケートが結成されていたとしたら、交易ルート建設までの一連の流れは全てシンジケートの計画通りの出来事だった事になるからな。それはいくら何でも驚異の計画性と言うよりも未来予知じみた何かだ。そして、そんな神懸かり的な事を成し遂げた組織の末路が利権争いに負けて壊滅なのだからそれを信じろと言う方が無理のある話だろう」
そんな超越組織が何でそんな俗な理由で壊滅するんだ? って話だしな。
「まあ、何年も続いている組織なら人の入れ替わりというものもあるから、最初とある段階とでは様変わりしている場合も普通にあるがな」
「複数の人間で運営する組織である以上、必ず生じる現象だろうな。最初は未来予知レベルの知性を持った奴が管理していた組織でも、そんな頭脳の持ち主がいなくなれば、必然的に組織の判断力は鈍る事になる。その後の組織の管理者が派閥争いをしたり、組織のためではなく自分個人のために行動を取るようになれば崩壊するのは目に見えているな」
天才の後継者が天才とは限らんしな。そして、もしも同じ天才だったとしても、アイデア一つで勝負する初期段階と莫大な資産を運用してさらに資産を増やしていく成熟段階とでは求められる才能そのものが異なるわけだ。現場で優れた才能を持っている人間が書類仕事でも才能を発揮するかと言われたら必ずしもそうとは限らないしな。つまり、同じ天才でも……仮に同一人物だったとしても、立場や状況が異なれば壊滅的な失敗をする可能性は普通にあるわけだな。




