どのように使われたか
「悪い噂か……そればかりは当事者の立場になってみないとわからない事だな。一応、関税が高過ぎるだとかの苦情が相次いでいたのは記録に残ってはいるが」
「まあ、そういった苦情は絶えないだろうな」
「ああ。特に領民からの反感を買った原因とされているのは徴収した税金をどのように使っているのかが不透明だった事だな。……もっとも、集めた税金がどのように使われているかなどとてもではないが教えられるわけはないのだがな」
利権関係が絡む以上は使い道なんて私腹を肥やす以外無いわけだからな。そんな事は口が裂けても言えなかった事だろう。
「実際には教えられないにしても、それでも表向きにはどういう風に使われているのかの説明はあるだろ?」
「勿論ある。それも最も都合の良い理由がな」
「なんだそれは?」
「今後の開拓事業の予算にあてるというものだ。支援だとか、そういったものに対してだな」
なるほど、元々は人類の生存圏の拡大のための開拓だ。それが今後の発展を視野に入れて資金を集めるというのは理にかなっている。
「上手い事を考えたな。だが、それを理由にしてしまったからには、実行に移さないわけにはいかないわけだな。実際に莫大な予算が『積み上がっているハズ』なんだからな」
これの上手いところは開拓事業と言う極めて長い期間を要する計画のための予算だという事だ。つまりは長い期間塩漬けにされるであろう予算でもある。そして年月が経てば開拓の方も成功率が上がるなりして低コスト化が進めば、予算を使い込んだとしても帳尻が合う公算が高いわけだ。
「ああ。定期的に大規模な計画を立てる必要がある。だが、実態としては予算は予想されているよりも遥かに少なく、しかも利権の都合もあって開拓される土地はすでに作られた村の周辺……つまりは新しい交易ルートを構築する事に繋がるものではなかったわけだ。これで失敗に終わる事が多いのだから、領民としては不満が溜まる一方だ」
まあ、それはそうなってしまうだろうな。
「まさか予算が思ったよりも少ないなどとは夢にも思わないから、ハイリスクローリターンな計画のように思えてしまうわけだな」
「その通りだ。それで開拓への熱意が一気に冷めてしまったわけだ。そして、やはりそれが高過ぎる関税への不満に向かってしまう」
開拓なんて辞めてそれに充てる予算のための税金も廃止しろって機運が高まるわけか。まあ、当然の流れだな。




