裏切りの価値
「利益追求のために派閥を行ったり来たりしたのか……そんな事してたら上の位にはいつまで経ってもいけないと思うが……」
「それどころか最後の最後まで腰を据える派閥を決められなかった貴族は没落していったぞ」
「まあ、それはそうなるだろうな」
最終的な趨勢が決した時点でそれ以上の勢力の必要性は薄くなっていくからな。黙っていても人が集まってくる状態になった以上、わざわざ好条件で迎え入れる理由は無くなったわけだ。
「それでも派閥に入れた貴族はまだマシな方だ。中には相手方の派閥だとして追い出した者もいる」
「そりゃあ、旗色が悪くなったらさっさと裏切るのが分かり切ってるわけだからな……そんな奴を上の階級には置いておけないだろうな。最低でもそれ相応の功績は欲しいところだ」
すぐに裏切るってのはそれだけでも減点対象だ。これは感情論の観点でも勿論そうなのだが……組織の運営においても危険極まりない存在だ。何せ報酬次第で組織の秘密を売りかねないという事だからな。いくら何でも怖すぎて重要な情報なんて教えられないというものだ。
「まあ、その通りだな。功績もなく……つまり何の土産も無く派閥に入ろうなんて虫のいい話は無いわけだ。線引きとしてはシンジケート勢力の打倒に対して何らかの貢献をしたかどうかという話になるのだが……これはほぼそのままの意味でどのタイミングでシンジケート側から抜けたかを意味している」
「まず大前提としてシンジケート側の方がマジョリティだったハズだしな。その時点で裏切って仲間になってくれたのなら歓迎するだろう。勢力が互角……拮抗している状態だったとしても、向こうが一人減ってこちらが一人増えるのであれば、事実上二人分の差が生まれる事になるわけだからこれも歓迎するだろう。ここまでは何なら仲間にならなくともシンジケート側から抜けてくれるだけでもありがたいハズだ」
これはシンジケート側の勢力の方が大きい時程、裏切りの価値は高くなる。それだけ裏切りのリスクは高いわけだからな。逆にシンジケート側の勢力が弱体化する程その価値は低くなるわけだ。言い方を変えれば自然消滅しているだけだからな。裏切りに価値があるのは……シンジケート側の勢力が拮抗状態よりもやや不利な状態になっている時がギリギリか。ここら辺なら団結されたらまだまだどう転ぶかわかったものではないし、とどめの一押しにもなりえるからな。これ以上弱体化した状況で裏切っても、それは単に派閥としての価値を失って分裂したに過ぎないから裏切るとはみなされないな。




