辺境伯に求められた事
「なるほどな……結局のところは遠くの土地で起こっている問題に介入するのは金と時間がかかる事が問題なわけだからな。国がやりたがらないように辺境の土地を治める事を命じられた辺境伯もやりたがらなかったわけか」
「そういう事だな。そもそもの話、当時辺境伯に求められていたのは開拓による領土拡大ではなく領地の守護と管理だからな。特に魔物やならず者達が大量にいた時代では国からも民からも重要視されていた」
「それはそうだろうな。領民からしてみたら自分達の身の安全なわけだからな。そして、辺境で魔物やならず者達の侵入を阻む事が出来れば都に近い方面にはそれだけ危険が少なくなる事でもあるわけだから……国からしてみても開拓より防衛の方を重要視するだろうな」
何せ土地の管理者だからな……任されている土地の管理も出来ないのに開拓をされても、ただでさえオーバーしているキャパシティをさらに圧迫する事になってしまう。そうなればどう考えてももっと他に優先してやるべき事があっただろうって話になってしまう。
「最初の頃は挑戦者も多かったが、失敗が重なる毎に消極的になっていったからな。当たり前の話ではあるが……事業に失敗したしわ寄せは領民に降りかかるからそう何度も失敗出来るものではない。外側の事より内側の事に集中するようになっていったのもそのためだ」
「まあ、権力と責任が強くなればなるほど無計画な判断は出来なくなってくるからな……しかし、計画性を持つと言っても、成功例が殆ど無いんじゃどうしたって危険性を無視出来なくなるわけだな」
「そこは大きい組織が持つ問題点だな。小さな組織だったらリーダーが一から十まで全ての判断を下す事が出来るが……これが巨大化して二百も三百もの判断が必要になってくると、とても人間一人では間に合わなくなってしまう。そこで人が増えてくるわけだが……部下全員がリーダーと全く同じ思考レベルで同じ判断を下せるかといわれると、かなり難しい話だな」
基本的に組織が上手く行くにはリーダーよりも頭の良い部下が必要になってくるからな。リーダーが一番頭が良いと部下はリーダーの判断や命令の真意を読み取れない可能性が出てくるから色々と危険になってしまい、結果として安全策を取るようになってしまうわけだ。




