強い縄張り意識
「人類の生存圏か……当然あるだろうな。それが過去でも現代でも……それこそ未来であってもな」
「当時としては都にいても魔物からの襲撃というリスクがあったからな。都から離れた……増してや未開の地なんてどんな危険が付きまとうか想像もつかない世界だったわけだ」
「都にいても魔物が襲撃してきたのか?」
まあ、人がたくさん住んでいれば、それだけ物資も豊富にあるだろうし、食料もたくさん保存されているだろうと言うのは予想出来るが……都であってもそんな事になるのであれば、それ以外の村なんてどうしようもないだろうな。
「ああ。開拓事業が当初、住民からの反発もなく進める事が出来たのも魔物の襲撃が多かったからというものがある。魔王が倒された以上、魔物に負けてばかりではいられないという反骨精神もあったのだろうが……防衛線を築くという点でも必要とされていたからな」
「なるほどな。都の周辺に村があれば、魔物達はまず村の方から先に襲うハズだ。そこから情報を分析すれば、必要な戦力を揃えるための時間も生まれるし、都に住む人々も比較的安全な暮らしが出来る。ここら辺は実利があるから受け入れられやすいだろうな」
「だが、それもある程度まで拡大した辺りで強い反発へと変わっていく。辺境の地で何かある度に戦力を集めて派兵していたら金は幾らあっても足りなくなるからな」
「だからこそそういった問題を解決させるべく、そういった辺境とかの土地を治める人物には強い権限を与えたわけだ。都からの命令を待って後手に回って取り返しのつかない事になったら大惨事になるからな」
辺境伯がとにかく強い権限を持っているのもそのためだ。要は国の領土の端……もしくは外側の面倒ごとを国の中枢である都にまで持ち込ませないためのフィルターのような役割を持っているわけだ。それでいて裏切られたら国が存亡の危機に見舞われると考えると信用出来る者である必要もある。戦略的に重要で、それ故に信用出来る者にしか任せられないとなると、必然的に多少の手続等は無視しても良いように強い権限を与える事になるわけだ。
「その結果、辺境伯の地位や権限は徐々に上昇して、余計にその土地より外側を開拓しようと考える者は減っていったわけだ」
強い縄張り意識を持つようになっていったわけだ。辺境伯が対応しきれない程遠くの土地では問題も解決しないだろうから、これによって縄張り意識はより強くなっていくわけだな。




